つぶやきで始まりつぶやきで終わったZOZOプロ野球新球団構想とは何だったのか?
2か月後の9月に前澤氏は、総額700億円以上が必要とされる民間人初となる月旅行計画への参加を発表。10月には10億円はくだらないという1717年製のバイオリンの名器「ストラディヴァリウス」の「ハンマ」を購入し、11月には日本初開催となるプロゴルフのPGAツアーの冠スポンサーに「ZOZOチャンピオンシップ」としてなることを発表した。 賞金総額975万ドル(約11億円)、優勝賞金175万ドル(約2億円)の国内史上最高額を争うビッグトーナメントで、会見では「事業としても他人がやっていることの二番煎じではなく新たなチャレンジをやりたかった」と語り、6年契約を結んだ。 ちょうど10月1日に「スタートトゥデイ」から「ZOZO」へと社名変更するタイミングに世間に衝撃を与えるようなニュースを連発させた。うがった見方として、プロ野球参入発言を含めた一連の話題作りは、新社名のブランディング戦略のひとつだったのではないか、という意見もあった。確かに「宣伝効果」「認知度アップ」という点では効果があった。 「複数の球団オーナーや関係者と面会した」という前澤氏のコメントからすると、水面下では、ずいぶんと計画的に話を詰めていたように聞こえるが、ZOZOの社内事情に詳しい関係者によると、「思ったことを突発的につぶやいただけ」という話も出ている。 ただ、複数の球団オーナーには新規参入の先駆者ともいえる楽天の三木谷浩史オーナーが含まれているそうで、複数球団での新規参入を実現させるため、ZOZOと同じく年間の総売り上げが、約1000億円規模の某大手IT企業や、M&Aでの急速な事業拡大を進めてきた企業などに声をかけたという話も漏れ伝わってきていた。 実現を模索はしたが、具体的に歩調を合わせ、共同参戦してくれる企業が見つからず、そもそも、プロ野球コミッションを含めた“12球団のオーナークラブ”が、“お仲間”に入れてくれるのか、14球団のエクスパンション(球団数拡張)を認めてくれるのか、という根本的な問題さえも解決されておらず、まったく五里霧中のまま「一旦、断念」を宣言せざるを得なかったのかもしれない。 それにしてもである。途中経過の報告もなく、前澤氏のツイートだけで「一旦、断念」では、あまりに説明不足。メジャーでは、球団経営は、ビジネス投資のひとつになっているが、プロ野球には、「文化的公共財」という社会的意義がある。7月の発言を放置せず「一旦、断念」を伝えただけでも、企業のトップとしての責任を果たしているのかもしれないが、「文化的公共財」を手に入れるのだから、もう少しちゃんとした“終息宣言”があってしかるべきではなかったか。 プロ野球ファンの多くが、前澤氏率いるZOZO球団が、どれだけ斬新な球団経営プランや、スタジアム構想を打ち出してくるのかに期待していただけに、その拍子抜け感は、半端ではなかった。 では、今回のZOZO球団騒動は、まったく意味のない行動だったのか。今後「一旦断念」が「もう一度、再開」に変わる可能性はあるのか? 横浜DeNAの元球団社長で球団買収にかかわった経験のある池田純氏は、こんな見方をしている。 「野球界を経験した人間からすると、最初のツイッターでつぶやいた時点から、夢や思いだけでは、なかなか動き難いのではないか、とは感じていました。野球界だけでなく、日本のスポーツ界には、嫉妬が渦巻く、クローズドされた“界”の部分が根強く残っています。ただ、簡単に夢や思いを口にできない野球界の中で、なんのしがらみもない人が、それを口にした意義は、少なからずあったのではないでしょうか。部外者の発信は、時には刺激となって、そういう膠着状態をドライブさせたりもします」 池田氏は、前澤氏の行動を支持はした。では、今後のZOZO新球団構想再燃の可能性はどうなのだろう。