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全力で、自分の仕事を――今永昇太、いざ開幕のマウンドへ/FOR REAL - in progress -

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週刊ベースボールONLINE

優勝を目指して戦う横浜DeNAベイスターズ。その裏側では何が起こっているのか。“in progress”=“現在進行形”の名の通り、チームの真実の姿をリアルタイムで描く、もう一つの「FOR REAL」。 今永昇太コラム「開幕投手」

 3月9日に最初の開幕延期が決まったのちも、スタートゲートの仮設と撤去は繰り返された。  プロ野球をなりわいにしている26歳が、動じなかったと言えば嘘になる。社会情勢を伝える報道に接すれば接するほど、公式戦開催の現実味は薄れゆくように感じられた。  ただ、今永昇太は切り替える。自身の心を未来に飛ばし、そこにある光景を見たからだ。  登板後の取材。負け投手はうつむき加減に話している。 「コロナウイルスに左右されたこともあって、ちょっと調整が……」  心を現在に引き戻し、今永は首を振る。 「そんなことを言っている自分自身を想像したくはない。それを言い訳にするよりも、前向きに捉えて『レベルアップできました』と言えたほうがカッコいいじゃないか」  濃い霧の中に歩みだした。

「ちっちゃい人間だなあ、お前は」

 明確な期限のない自主練習期間は、ポジティブに見れば、自由な実験が許される時間だ。トレーニングにせよピッチングにせよ、試みてはその結果や意味を確認し、そうして得られる大小の発見を積み重ねた。  だが、おそらく最大の変化は内面に起こった。  どれだけ「前向きに」と心がけても、自由な外出を阻まれる日々が長引くにつれ、今永の心は少しずつささくれだった。ちょっとしたことでいら立つ自分がいた。  ストレスに苛まれている今永を、もう一人の今永が見つめていた。 「こんなことでイライラするなんて、コロナウイルスの術中にはまってるようなものじゃないか。ちっちゃい人間だなあ、お前は」  そんな脳内の対話に苦笑を浮かべることができたとき、今永の心はひと回り大きくなった。  そしてある日、ふと自分の行動を省みるに至る。 「たとえば、コンビニでお金を払っておつりをもらうとき、スーパーで品物をもらうときに、『ありがとうございました』って口にしてこなかったな、と。でも、こうしてコロナウイルスの感染が広がるなかで、社会のインフラを止めないためにリスクを背負いながら働いてくれている、経済を回してくれている方々にはあらためて感謝の言葉を言う必要がある。そういう方たちはぼくらにとってすごく当たり前の存在だけど、当たり前と思っちゃいけない」

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