ONE OK ROCK、Mr.Children、宇多田ヒカル……映画『キングダム』主題歌に共通する“生きろ”というメッセージ
ONE OK ROCK、Mr.Children、宇多田ヒカル。いずれ劣らぬ大物ばかりだが、彼らにはある共通点がある。天下の大将軍を目指す信(山﨑賢人)と、中華統一を目指す秦王・嬴政(吉沢亮)の活躍を描く映画『キングダム』に主題歌を提供しているのだ。彼らのリリックが作中の主人公とどうリンクし、私達にどんなメッセージを伝えてくれるのか考えてみたい。 【画像】東京ドームでのONE OK ROCK シリーズ第1作目『キングダム』(2019年)の主題歌は、ONE OK ROCKの「Wasted Nights」。ONE OK ROCKらしい、骨太でエモいロックナンバーだ。マッシヴなバンドサウンドをバックに、ボーカルのTakaは〈Feel like I can take the world〉(この世界を手に入れられるような気がした)、〈Don’t be afraid to dive〉(飛び込むことを恐るな)と歌いあげる。それは、信と嬴政に対するエールであり、我々リスナーに対するエールでもあるだろう。 続く『キングダム2 遥かなる大地へ』(2022年)は、Mr.Childrenの「生きろ」。タイトル通り真っ直ぐなメッセージが聴く者のハートに突き刺さってくる、パワーバラード。桜井和寿が〈その日が来るまで 生きろ 生きろ〉と熱唱するラストは、この曲のハイライト。映画では、羌瘣(清野菜名)が「だってお前はまだ生きているじゃないか!」と仲間を叱咤するシーンが印象的だったが、まさに作品が掲げるテーマとリリックが完全にシンクロしている。 そして現在公開中の『キングダム 運命の炎』(2023年)は、宇多田ヒカルの「Gold ~また逢う日まで~」。静謐なピアノで幕を開ける、美しいR&Bナンバーだ。音数を極力抑えたサウンドプロダクションと思いきや、中盤はハネるようなバックビートに曲調が変化し、アッパーな展開に。映画では亡き友と誓った嬴政の壮絶な過去が明かされるが、〈あれ以来聴いてなかった曲〉や、〈消えないよ あなたの隣で見つけたもの〉という歌詞からも、“もう二度と会えない誰か”に対する想いが綴られている。 楽曲に対するアプローチは違えど、それぞれが『キングダム』シリーズのテーマに寄り添ったトラック。だがリリックに着目すると、ある共通点が浮かび上がってくる。それは、今の自分に対する“葛藤”だ。 〈Be afraid that you didn't try〉(挑戦しないことを恐れるんだ)(「Wasted Nights」)はチャレンジすることに勇気を持てない自分への暗示なのだろうし、〈自分は小さな点の一つでしかない その当たり前を突きつけてくるんだ〉(「生きろ」)は、ちっぽけな存在であることを認めたくない気持ちが如実に表れている。〈幸せは側で待ってるだけ〉(「Gold ~また逢う日まで~」)に至っては、もはや諦観にも似た想いが刻印されている。 〈それなら 追いかけろ 問いかけろ〉(「生きろ」)や、〈追いかけても追いつけぬ〉(「Gold ~また逢う日まで~」)など、“追いかける”というキーワードも象徴的だ。手が届きそうで手が届かない場所へ、彼らは向かおうとしている。もどかしさ、やりきれなさがあるが、その先に一筋の光があることも歌詞は指し示している。 〈'Cause by this time tomorrow We'll be talking about tonight〉(だって明日のこの時間まで、僕たちは今夜のことを話し続けるから)(「Wasted Nights」)、〈思いきり笑える その日が来るまで〉(「生きろ」)、〈また逢う日まで また逢う日まで また逢う日まで〉(「Gold ~また逢う日まで~」)。ONE OK ROCK、Mr.Children、宇多田ヒカルが紡ぐ音楽は、決して単なる人生の応援ソングではない。それは、いつか来るであろう“その日”に向かって一歩ずつ歩みを進めていく、“弱い自分を認めるための旅路”だ。 新型コロナウイルスの流行、ロシアのウクライナ侵攻など、私たちの住むこの世界は次々と新たな社会問題が起こり、目まぐるしく変化している。それでも毎日をサバイブしていくために、これらの楽曲は私達にストレートに“生きろ”と鼓舞する。 〈Let's live like we're immortal Live just for tonight〉(死を忘れたみたいに生きよう 今夜のために生きよう) (「Wasted Nights」) 〈その日が来るまで 生きろ 生きろ〉 (「生きろ」) 生きることを肯定し、その意義をしっかりと伝えること。明日があることを、しっかりと伝えること。だからこそ『キングダム』の主題歌は、力強く僕らのハートを震わせるのだろう。私達を力強く、前向きな気持ちにさせてくれるこれらの曲をぜひとも聴いてほしい。
竹島ルイ
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