『進撃の巨人』を大成功に導いた梶裕貴の功績 エレンに“魂を捧げた”10年を振り返る
TVアニメ『進撃の巨人』は、人類の心を揺さぶる比類なきアニメーション作品として、アニメーション史に大きな足跡を残した。11月8日に公開された『劇場版「進撃の巨人」完結編THE LAST ATTACK』は、TVシリーズの完結から約1年が経過した今なお、作品への熱が冷めることを知らない観客たちの熱狂的な支持を集めている。 【写真】エレンの最終形態・終尾の巨人の姿 ●梶裕貴が実践した、エレン・イェーガーンとの深い“同化” 本作を語る上で欠かせないのが、主人公エレン・イェーガーを演じた梶裕貴の存在だ。現在、声優界を代表する存在として知られる梶。「声優アワード」で第7回、第8回と2年連続の主演男優賞を受賞するなど、その卓越した実力は声優業界内外で高く評価されている。 2013年4月のSeason1放送開始から、10年の歳月をかけて紡がれてきた『進撃の巨人』。梶は『七つの大罪』のメリオダス、『僕のヒーローアカデミア』の轟焦凍、『マギ』のアリババ・サルージャ、『ハイキュー!!』の孤爪研磨など、数々の印象的な役柄を手掛けてきた。しかし、アニメファンの枠を超えて梶裕貴の名が広く認知されるようになったのは、間違いなく『進撃の巨人』エレン・イェーガー役があってこそだろう。エレンへの徹底的な没入と魂の込もった演技――否、エレンと梶の深い“同化”こそが、作品の成功を導いた重要な要素の一つとなった。 ●自身の手を噛みながら挑んだアフレコ その献身的な姿勢がよく現れているのが、Season3第55話「白夜」でのアフレコのエピソード。全身傷だらけで歯が抜け、口内が腫れ上がったエレンを演じる際、よりリアルな表現を追求して実際に梶はパンを口に詰めての収録に挑んだという。他にも、エレンの巨人化シーンにおいて、その真摯な取り組みは徹底されている。物語設定上、エレンは自身の手を噛んで巨人へと変身するが、梶は収録時も実際に自身の手を噛みながら声の表現に挑んでいるそうだ。このような梶の役作りへの真摯な姿勢からは、プロフェッショナルとしての情熱を感じざるを得ない。 多くのインタビューで梶は「エレンと自分は似ている」と率直に語っている。この言葉には、10年という歳月をかけて一人の役を演じ続けた者ならではの説得力があるように思う。仲間を守るために立ち上がり、怒り、そして深く絶望するエレンの演技には、技術や経験だけではない、梶の思いそのものが感じられるからだ。