“経済予測の達人”ニトリ会長が「2021年、世界はデフレに突入する」と考える理由
「以前から2022年には売上高1兆円という目標を掲げてきましたが、いよいよ達成が見えてきた」 【写真】この記事の写真を見る(3枚) 多くの企業が新型コロナウイルス感染拡大による打撃を受ける中、コロナ禍をものともせず34期連続の増収増益が確実視されるニトリホールディングス。創業者の似鳥昭雄会長は売上高1兆円という目標の実現に自信をのぞかせた。11月には、ホームセンター業界第7位の島忠と経営統合することで合意し、現在、株式公開買い付け(TOB)を進めている(12月28日完了予定)。 なぜニトリは「ひとり勝ち」できるのか。その源泉の一つが、似鳥会長の「先を読む」力だ。世界経済をつぶさに分析し、株価や為替の変化を読み切る力には定評があり、その経済予測はビジネス誌や週刊誌に掲載されるたびに「コワいほどよく当たる」と話題になっている。
2021年の世界経済はどうなる?
「僕は会社の為替とか会社で買う株は大体的中してきました。たまに自分で買うとダメ(笑)。『予測が当たる』と言われますが、大事なのは無心、無欲であること。そして世界経済、特に米国を見ることです」。 米中が牽引する世界経済。日本経済も当然そこに大きく左右される。似鳥会長が思い描く2021年は、IMFの世界経済見通しよりもシビアだった。 「IMFの世界経済見通しでは、新型コロナウイルスの影響が薄れて経済活動が再開していくのを前提に、2021年の世界経済成長率が5.2%に回復していくとしています。でも僕は良くて2~3%くらいではないかと見ています。日本は既に20年以上続くデフレですが、世界が日本型のデフレの時代に入るのではないかと」 1月20日にはバイデン新政権が誕生するが、それによってすぐに景気が好転することはないとも指摘する。
「不況時こそ仕掛ける」
「財政拡大で景気刺激策を取り続けたトランプ政権からの国内景気の落ち込みは避けられないでしょう。所得税の最高税率を37から39%に、法人税率を21から28%に引き上げるといった増税政策を打ち出していますから。そのマイナスを、一足先に経済を立て直した中国との貿易拡大などで埋め合わせようとするでしょうが、それでも不況に突入していくと思います」 しかし、ニトリはバブル崩壊、リーマンショックという不況時に次々と未来への投資を仕掛け、会社を大きくしてきた実績がある。島忠買収劇は、その最たるものだろう。「不況時こそ仕掛ける」という経営方針は、コロナ禍においてもブレない。 「景気のいい時は頑張っても差は付かないもの。ライバルに差を付けようと思ったら、低成長が何年続くかわからない、今のような不況の時こそがチャンスなのです」 「文藝春秋」新年特別号および「文藝春秋digital」掲載のインタビュー「 売上高一兆円が見えてきた 」では、島忠買収に動いた3つの理由、現在注力している女性衣料専門店「N+」(エヌプラス)、今後のM&Aの方向性などについても、似鳥会長が詳細に語っている。
「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2021年1月号