うつ病患者の脳では何が起こっているのか…最新の研究でついにわかった「危険因子」
そもそもうつ病とは何か
SITH‐1がなぜうつ病を引き起こすのかを知るためには、うつ病患者の脳では何が起こっているのかを知る必要があります。しかしそれ以前に、そもそもうつ病とはどんな病気なのか? を正しく知らなくてはなりません。 うつ病の定義、すなわち診断規準は、簡単にいうと以下のようなものです。 まず、次のどちらかがあることは必須です。 ●ほとんど一日中、抑うつ気分を感じる ●ほとんど一日中、すべての活動に興味や喜びを感じない 次に副次的な症状としては、 〇食欲が減退または増加する 〇不眠または睡眠過多 〇精神運動性の焦燥または制止 〇易疲労性または気力の減退 〇無価値観または罪責感 〇思考力や集中力の減退 〇死についての反復思考 が挙げられます。これらのうちの5つ以上が2週間続くと、うつ病が疑われます。 また、他の病気がないことも条件となります。 かなりしっかりと条件を決めてはいますが、そもそも原因が一つに決まるような性質のものではないことは、この診断規準を見れば明らかです。 しかも、この診断規準には検査項目は何も入っていません。 原因が不明なために、うつ病の研究をしている各々の研究者が、本当に同じ病気の研究をしているのかどうかさえわからないという点は、慢性疲労症候群と似ているともいえます。 それでも、うつ病の原因探しをしている過程で、うつ病とはどんな病気なのか、うつ病患者の脳内ではどんなことが起こっているのかが、少しずつ明らかになってきました。 まずは、うつ病の原因に関わる主な説を紹介しながら、うつ病患者の脳では何が起こっているのかをみていきましょう。
うつ病の脳で何が起きているのか (1)心因説
この説は、うつ病の原因は心理的な問題であるというよりは、そもそもうつ病は病気ではないとする考え方です。 うつ病で生じる抑うつ気分や喜びの消失は、物事を深く考えているからこそ生じることであり、これは個性であって、病気ではないというわけです。 うつ病の偉人というと、日本人では作家の芥川龍之介や太宰治など、海外の大天才としては、進化論のチャールズ・ダーウィンや数学者のゲオルク・カントールなどなど、枚挙にいとまがありません。 心因説は決して古い考え方ではなく、現在でも心因説をとっている医師は多く存在します。そうした人たちは、ネットなどで自身の病院を紹介する際にも、できるだけ薬剤を使用しない治療であることをうたっています。 心因説にしたがえば、うつ病になっても患者の脳は、基本的には変化しないということになります。