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雪組トップスター・望海風斗出演 宝塚歌劇が見せた一味違う新選組の世界

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HOMINIS(ホミニス)

浅田次郎の人気小説を舞台化した『壬生義士伝』が、7月5日(日)にいよいよタカラヅカ・スカイ・ステージに登場する。 【写真を見る】『壬生義士伝』('19年雪組・東京・千秋楽)より 時は幕末。南部藩士・吉村貫一郎は学問もでき、剣の腕も立つが、いかんせん下級武士ゆえに禄は少なく暮らしは厳しい。そこで一念発起して脱藩し、新選組に入隊する。 大義のためなどではない、ただ故郷に待つ家族の飢えと困窮を救いたい一心で人を斬る男の物語は、宝塚の舞台ではどのように描かれるのだろう?   主人公の吉村貫一郎を演じるのは、すでに次回作での退団を発表している円熟のトップスター、望海風斗だ。先ごろananの表紙を飾ったことでも話題になり、抜群の歌唱力にも定評がある。 京に出てきても南部弁が抜けず、新参者として先輩隊士らに頭を下げながら酒を運ぶ役どころは、宝塚のトップスターには珍しい。裏社会を生き抜く男を描く『アル・カポネ --スカーフェイスに秘められた真実--』や『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』、背徳の魅力を極めた『ドン・ジュアン』、一転して爆笑の連続だった『20世紀号に乗って』など、これまでも良い意味でタカラヅカスターらしからぬ多彩な役どころを演じてきた望海が、この作品でも"トップスターの守備範囲"を広げてみせた。 貫一郎の愛妻しづと、貫一郎に想いを寄せる商家の娘みよの2役をトップ娘役の真彩希帆が演じる。故郷で夫の帰りを待つしづと貫一郎とはほとんど離れ離れだが、トップコンビで見せる貫一郎とみよの夢のような逢瀬の場面の導入は宝塚ならではの工夫だ。 貫一郎とは幼い頃からの親友であり、南部藩の家老としての重責を担う大野次郎右衛門は、真面目で実直な人柄で、彩風咲奈にぴったりの役どころ。藩を守る立場ゆえ苦渋の決断を迫られてから、その決断を償うかのように自らも死に向かっていくラストシーンは涙なしては見られない。 もうひとつ涙なしでは見られないのが、貫一郎の長男、嘉一郎(彩海せら)の健気さだ。父親不在の貧しい一家を支え、父の無念を晴らすため戦場で幼い命を散らす。 逆に宝塚の舞台らしいなと思うのは、軍医となった松本良順(凪七瑠海)や次郎右衛門の息子・大野千秋(綾凰華)など、維新後まで生き残った人々が賑やかに昔を回想しながら物語を進める形式だ。重苦しい場面の合間にホッと一息つかせてくれるひとときである。 これまで新選組を題材にした作品は宝塚でもいくつか上演されてきた。沖田総司を主人公とした『星影の人』、土方歳三を主人公とした『誠の群像』(望海も2018年全国ツアーで土方を演じている)、この他、幕末を舞台とした作品では必ず、浅葱色の羽織をまとった新選組隊士が登場してきた。 だが、この作品で描かれる新選組は、泣く子も黙る剣豪集団のイメージとは一味違う。ダメ剣士も入り混じった人間くさい集団である。個性的な隊士の取りまとめに苦慮し「めんどくせぇ」が口癖となっている土方歳三(彩凪翔)も、いたずらっ子のような沖田総司(永久輝せあ)も、そして、貫一郎に対して愛憎入り混じった感情を抱き続ける斎藤一(朝美絢)も、これまでの作品とは一味違う顔を見せる。 小説の冒頭に、局中法度を破った隊士の粛清が上手くいかず難儀しているところを貫一郎が見事に助ける場面がある。ここはさすがに宝塚の舞台に載せるのは難しいだろうと思いきや、なんとこの場面もある。今際の際にジタバタする隊士(久城あす)の芝居などもマニアックな見どころだ。 「日本物の雪組」が見せる一味違う新選組の世界が、思いがけず宝塚への扉を開いてくれるかも知れない。 文=中本千晶

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