【毒家族に生まれて】アメリカの男女平等を「殺した」反フェミニスト、フィリス・シュラフリー
2016年9月5日、トランプ元大統領の選挙戦を優位に動かしたと言われる、「保守派の女神」が彼の勝利を見ることなく亡くなった。その名はフィリス・シュラフリー。ガン闘病中にも拘わらずトランプ氏を熱心にサポートし、文字通り死を賭して演説する姿は多くの人の心を感情的に揺さぶった。彼女の正体は「反フェミニスト」。この立ち位置を武器に著作を何本も書き上げ、雑誌も立ち上げ、ラジオ番組も持ち、テレビスターにもなった。反フェミニズム運動を21世紀になっても貫き、90を過ぎてもトランプ支持で再び時の人となったバイタリティの陰には、他人への共感を抑え込み、ただひたすらエリート街道を進むことだけを刷り込んだ毒親の教育があった。
アメリカのフェミニズムを20年遅らせた女性
現代でもその名は米国における女性解放運動の最大の敵として知られる。彼女の最大の“功績”は、アメリカの憲法に「男女平等」が記載されるのを阻止したこと。男女平等指数121位の日本の憲法ですら「両性の平等」の記載があるにもかかわらず、自由の国アメリカではいまだに実現されていない(※)のは、1970年代男女平等修正条項、通称ERA(The Equal Rights Amendment)とその推進運動に対するネガティブキャンペーンを主導した、彼女の力によるところが大きい。 (※投票権に関連する記載のみに抑えられている)
昨年Huluのドラマシリーズ「ミセス・アメリカ~時代に挑んだ女たち~」でケイト・ブランシェットが演じ(日本では2020年2月6日より放送開始)、再び注目が集まっているシュラフリーの執拗なまでのフェミニズムへの攻撃、専業主婦こそが女の道と説きながら自身は職業婦人として先端を走るという矛盾、そして何よりも恐ろしいまでの支配欲はどこからやってきたのか。探っていくと、そこには上昇志向の親による徹底的なエリート教育があった。 (写真)「ミセス・アメリカ~時代に挑んだ女たち~」より(日本では2020年2月6日よりWOWOWにて放送開始)