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Sonosの新サウンドバー「Arc」が“プレミアム”である理由。開発者に聞いた

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PHILE WEB

アメリカのオーディオブランド、Sonos(ソノス)が、ドルビーアトモスに対応したプレミアムクラスのサウンドバー「Arc(アーク)」を発表した。製品の詳細は既報の通りだが、日本では7月からSonos公式サイト等で販売開始を予定する。 今回、Sonos本社のキーパーソンに、新製品「Arc」の開発がスタートした経緯や、音響設計に関する秘話を訊くことができた。パトリック・スペンスCEOが新しい製品とサービスに向けて寄せたコメントとともに、インタビューをお届けしよう。 ビデオ会議によるインタビューに答えていただいたのは、Arcを担当するSonos本社Senior Product Marketing SpecialistのHadley Simmons氏と、Senior Director, Audio EngineeringのChris Davies氏だ。 ■リッチなストリーミングコンテンツに最適化したサウンドバー ArcはSonosのプレミアムクラスのサウンドバーとして位置付けられ、現行製品のPlaybarとPlaybaseに置き換わり、新たにラインナップに加わる。Sonosにとって初めての、ドルビーアトモス再生が可能な “イマーシブオーディオ対応サウンドバー” であると聞くと、意外な感もある。 マーケティング担当のSimmons氏は、日本には2018年秋に上陸したコンパクトモデルの「Beam」が、音質とコンパクトなサイズ、そしてAmazon Alexaに対応する音声コントロールが可能なスマートなサウンドバーであることから、全世界で発売後から好評を得ていると語る。 特に最近では、音楽から映画、テレビ番組まで、あらゆるコンテンツが定額制ストリーミング配信サービスで提供されるようになっている。「ホームシアターでストリーミングコンテンツを高品位に楽しめる、プレミアムクラスのサウンドバーを求める声が高まっていました。Sonosはその声に応えるためにArcを開発しました」と、新製品のコンセプトを説明している。 Sonosはネットワーク対応のオーディオ製品を、様々な製品カテゴリーに渡って多数展開している。そのどれもが、Sonosのホームグラウンドであるアメリカをはじめ、日本でも多くのユーザーに高く評価されている背景には、Sonosが誇る最先端のソフトウェア技術が搭載されていることが挙げられる。 サウンドバーのフラグシップモデルであるArcもまた、Alexaと連携する音声コントロール機能(Googleアシスタントもアップデートにより対応予定)や、iPhone/iPadなどアップルのデバイスから音声コンテンツをWi-Fi経由でキャストできるようになるAirPlay 2との連携、そして一段とユーザーインターフェースが洗練される最新バージョンのSonosコントローラアプリ(以下:Sonosアプリ)による設定やコンテンツ再生機能が利用できる。 Arcは同日に発表された第3世代のワイヤレスサブウーファー「Sonos Sub」と、Wi-Fiスピーカーの「Sonos One SL」を組み合わせれば、一段とリッチなシアター再生環境に発展させることができる。 なお、デスクトップなどでの本格的なステレオ再生が楽しめるWi-Fiスピーカー「Sonos Play:5」(第2世代機)の後継機種となる「Sonos Five」も、Arcと同日に詳細が発表されている。Arc以外の2機種は、日本国内には今年の秋に導入を予定している。各製品の詳細についてはニュース記事を参照してほしい。 ■音づくりにはワールドクラスのクリエイターが参加した ArcにはSonosの設計によるカスタムビルドのスピーカーユニットと、これらに最適化した11基のクラスDデジタルアンプが搭載されている。8基は楕円形振動板のウーファー。うち2基はドルビーアトモス対応コンテンツを再生した時にハイトチャンネルの再生に使用される。 そのほか筐体には、低音再生を強化するためのウェーブガイドも組み込んだ。また3基のシルクドームトゥイーターも備え、ウーファーと連携しながら高品位に「人の声」を再現できる音づくりを重視してチューニングを追い込んだと、音響エンジニアのDavies氏が語っている。その過程では振動板の形状やサイズ、素材も入念な検証を繰り返して選定したそうだ。 サウンドビームフォーミングにより臨場感豊かな立体サウンド音場を作り出すArcは、設置した後にSonosアプリに組み込まれる「Trueplayオートチューニング」機能を使ってルームアコースティックに最適化すると、その実力を存分に発揮する。TrueplayチューニングはiOS、またはiPadOSのSonosアプリでのみ利用できる。 今回ドルビーアトモス再生に対応するArcのために、ユーザーのリスニング環境の天井の高さや形状、照明器具などの突起物も計算に入れて解析が行えるよう、Trueplayの機能をアップデートした。 Sonosのサウンドチューニングを、Davies氏のように各製品を担当する音響エンジニアがひとりで行うのではない。コンテンツ制作の最前線で活躍する “ワールドクラスのクリエイター” たちと密接に関わり、様々な声に耳を傾けながら完成させる開発プロセスを採用している。 Arcについても「Sonosのエンジニアと著名クリエイターたちがオープンにディスカッションを繰り返しながら、シアターファンが楽しめるだけでなく、クリエイターの意図も忠実に再現できるサウンドバーとしての音質を追い込んできました。私も何度かその輪の中に加わりましたが、皆が真剣に対等な目線で議論を交わす現場はとても活気にあふれていました」とSimmons氏が様子を振り返った。 Arcのサウンドチューニングにはもちろん、Sonosのサウンドエクスペリエンスリーダーとして全ての製品に深く関わるGiles Martin氏が参加している。ドルビーアトモス対応のサウンドバーであることから、アメリカのドルビーラボラトリーズ本社のスタッフとも密接に連携しながらシアターサウンドの追い込みを行ってきたようだ。 また映画作品のサウンドについては、これまでに『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』『インフェルノ』など150を超える作品に参加し、アカデミー賞録音賞を3度も受賞する音響技術者のChris Jenkins氏も関わっている。そして音楽系コンテンツによるチューニングにはKanye Westの作品のサウンドプロデュースなどを手がけるグッド・ミュージックレーベルのエンジニア、Noah Goldstein氏も参加した。 Giles Martin氏は、Arcの音を練り上げていく作業過程について「誰もが驚くほど込み入った作業にまで踏み込んで音を作り込んでいます。ところが、Arcのユーザーは誰もそのことを意識するがなく、ただ部屋にサウンドバーを置いて、コンテンツを再生するだけで臨場感あふれるサウンドを楽しむことができます。 “Easy to Use” であることを大切にするSonos製品のポリシーを、私はとても愛しています」とコメントしている。 Jenkins氏もまたArcのサウンドチューニングの完成度について「ただ素晴らしいだけでなく、クリエイターがコンテンツに込めた本当の思いをユーザーに届けることができるでしょう」と期待を寄せている。 ■スリムな筐体にSonosの最先端技術が詰まっている Davies氏はArcの開発において重視した「明瞭なダイアローグ再生」を、搭載するすべてのスピーカーユニットをソフトウェアで制御することで実現していると説明する。 Trueplayチューニングによりルームアコースティックを調整する際に、ユーザーがArcと正対して音を聴くスイートスポット以外の場所に移動しても、メリハリを効かせたダイアローグ、音楽のボーカルを再現できるよう、音場を整える。3基のトゥイーターは、特に高域成分の再現性を高めることや、ドルビーアトモスのコンテンツを再生する時には高さ方向の成分を力強く伸びやかに鳴らせるよう、音響設計を追い込んできた。 その上でさらにBeam等のサウンドバーも採用する「スピーチエンハンスメント(声成分の強化機能)」を合わせることにより、ハードとソフトウェアの両方で意図した性能を引き出している。なお夜間のシアター再生時には効果音の強さを抑え、ダイアローグの明瞭度を上げる「ナイトサウンド」も効果的だ。Sonosアプリから機能オンを選択できる。 Arcの筐体内部に天井側に向けて配置された2基のアップファイアリングスピーカーユニットは、ドルビーアトモスのコンテンツを再生する場面では高さ成分の立体的な音響空間を作り出す。通常の2ch、5.1ch音源を再生する時には低域を受け持ち、豊かな包囲感を作り出す役割を担うという。 Davies氏は「Arcは音楽再生を楽しむためのスピーカーとしても活用して欲しいと考えて、チューニングはニュートラルなバランスに整えることに腐心しました」と語っている。 Arcは壁掛けも、ラックの上に置く設置にも、どちらにも対応する。テレビの映像にに筐体がかぶらないよう、Arc本体の高さを押さえ込みながら、限られた筐体内部のスペースをフルに活かすため、プロダクトデザインチームと連携してトライアル&エラーを繰り返してきたとDavies氏が振り返った。 そしてArcもBeamと同様に、部屋の中の遠く離れた場所からでも、音声アシスタントがユーザーの音声コマンドを正確に認識できるよう、ファーフィールド音声キャプチャーに対応したアレイ構成のマイクユニットを内蔵している。 ■インテリアと自然に調和するプロダクトデザイン プロダクトデザインの側面から見たArcの特徴については、Simmons氏に聞いた。 横から見ると楕円形のArcの筐体を、ぐるりと270度、つなぎ目なく囲う美しいプラスチック製グリルが採用されている。グリルは全面に76,000個以上のパンチ穴を空けて音の透過性を確保し、モールド加工による繊細な曲げ加工を施した。理想的な音響特性と強度を実現するため、数年間に渡って試作とテストが繰り返されてきたという。 Arc本体の横幅は55インチ前後の薄型テレビのサイズ感に最適化している。Simmons氏は「テクノロジーを前面に打ち出すのではなく、インテリアとの自然な調和を感じられるエレガントなデザインとしています。生活空間に溶け込むオーディオのデザインを追求することは、Sonos製品に一貫するポリシーでもあります」と話している。 ArcはeARCに対応するHDMI端子を搭載しているので、同じeARC対応テレビをハブにし、複数のコンテンツプレーヤーやゲーム機、セットトップボックスなどをつなぎ、高品位で迫力あるサウンドをArcで楽しむことができる。 フロント側にはArcの稼働状態を知らせるためにLEDライトを設けているが、内蔵する明るさセンサーと連動するオートディミングコントロールも搭載している。リスニングルームの照明を落とすと自動的にLEDランプも明るさを落とす。 本体が稼働時に消費する電力はPlaybarよりも低く、4.3W駆動時で約26%もの省電力化を実現している。商品パッケージの梱包材に96.1%もの紙材料を使い、エコフレンドリーなサウンドバーとして隅々まで完成度を磨き抜いた。 ■第2世代Sonosアプリのハイレゾ対応はどうなる Arcと一緒に発表された第3世代のSubとワイヤレススピーカーのFiveは、いずれもホームネットワークに接続してSonosアプリで本体設定や音楽再生の操作を行う。Sonosアプリは6月8日に最新バージョンの「S2」にアップデートされることもSonosから発表された。 ArcとSub、FiveはS2世代のSonosアプリでのみ操作できる製品なので、もし既にほかのSonos製品を使っているユーザーが3つの製品を買い足した場合は、必ずアプリのアップデートが必要だ。アップデートを行う際には、お気に入りの楽曲やサービスなど、ユーザーがカスタマイズした項目はすべて引き継がれるという。 S2世代のSonosアプリではArcのドルビーアトモス再生のほか、ドルビーアトモス Audioのコンテンツ再生に対応している。4月下旬に始まったラジオストリーミングサービス「Sonos Radio」の聴取も可能だ。 プレスリリース等ではアプリの「ハイレゾオーディオ対応」についても言及されているが、インタビューの時点では「まだDolby Atmos対応以外に明かせることはない」とSimmons氏が回答している。今後の追加情報のアップデートに注目したい。 S2世代のSonosアプリは、ユーザーインターフェースがアップデートされる。音楽コンテンツの検索アルゴリズムが改善されるほか、Sonos製品をセットアップした部屋同士をグルーピングし、プリセットに保存できる機能など、マルチルーム再生が強化される。 これまでに発売されたSonos製品はどの世代まで最新のSonosアプリが使えるようになるのか気になるところかもしれない。Simmons氏は第2世代のPlay 5以降に発売された製品が、6月8日以降のソフトウェアアップデートによりS2世代のSonosアプリが使えるようになると説明している。残念ながら第1世代のPlay 5よりも以前に発売された製品については、ソフトウェアの大型バージョンアップの対象にはならないようだ。 Simmons氏は「アプリのサポートは継続しますが、今後提供されるアップデートの内容はバグ修正やセキュリティ強化に止まり、ユーザーインターフェース強化や新機能の追加は、S2世代以降のアプリでのみアップデートされます」と説明している。 ■進化を続けるSonosのネットワークプラットフォーム 最後に、CEOのパトリック・スペンス氏がArcの発売に向けて発表したコメントの抜粋を紹介したい。 スペンス氏は、エントリー向けサウンドバーであるBeamの成功が、ホームシアターブランドとしてのSonosのポジションをさらに強固なものにしたとして、「ラインナップにArcを加えることで、家庭のテレビが大型化・高画質化しているトレンドに即した、上質で没入感あふれるコンテンツ体験を多くのユーザーに届けていきます」と述べている。 現在アメリカにはSonosの製品を愛用する約1,000万世帯、2,900万のアクティブカスタマーがいるという。「Arcが皆様の家庭により良いサウウンド体験を届けるためには、Sonosアプリのプラットフォーム強化が必須だと考えています。ローンチしたばかりのラジオストリーミングサービスのSonos Radioも、さっそく好評を得ています。今後も進化するプラットフォームの展開を私自身も楽しみにしています」と、スペンス氏は意気込みを語っていた。 Sonosのネットワーク対応のオーディオ製品はその音質だけでなく、豊かな拡張性とシンプルな操作性が大きな魅力だ。S2世代のアプリも含めて、新製品の使い勝手がどれぐらい進化しているのか。実際の製品に触れる機会を待ちたい。

山本 敦

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