日本人の半数がかかる「歯周病」とはどんな病気? 症状や原因、治療について教えて
歯周病の診断と治療:治療の流れや期間、再発率について
編集部: 歯科医院では歯周病をどのように診断されるのでしょうか? 三瀬先生: 歯周病の診断はいくつかのステップで行われます。まず、歯ぐきの状態を目視で確認し、赤みや腫れ、出血などをチェックします。 次に、「歯周ポケット検査」を実施します。これは歯と歯ぐきの間にできた溝(歯周ポケット)の深さを測る検査です。この検査で、歯周ポケットが4mm以上だと、歯周病の可能性が高くなります。 編集部: 歯周ポケットの深さだけで、歯周病と診断されるのでしょうか? 三瀬先生: いいえ、それだけでは判断できません。例えば、歯周ポケットが同じ3mmでも、健康な歯ぐきの人と、もともと歯ぐきが下がっている人では後者のほうが病状はより深刻です。 そのため、私たち歯科医は歯周ポケットの深さにくわえ、歯ぐきの付着量(アタッチメントレベル)も診ていく必要があります。くわえて、レントゲン検査や歯の動揺度、細菌検査などを実施し、これらの結果を総合的に判断して診断を行っていきます。 編集部: 歯周病の治療法にはどのようなものがありますか? 三瀬先生: 最初に共通して行うのは「歯周基本治療」です。基本治療では、歯磨き指導によるプラークコントロールの徹底や歯石除去を行い、原因となる細菌を徹底的に除去していきます。 その後、再評価を行い、あまり改善がみられない場合は次のステップの「歯周外科治療」に進むこともあります。 編集部: では、歯周基本治療で一定の改善がみられたら治療終了となるのでしょうか? 三瀬先生: 最終の検査で改善がみられる、あるいは完全に治ってはいないけれど病状が安定している場合は、「メンテナンス」に移行します。これは歯周外科治療を行った場合も同じで、歯周病治療は必ず検査(再評価)でメンテナンスの頻度を決めて、治療終了となります。 編集部: 歯周病は治療をすれば完治する病気なのでしょうか? 三瀬先生: 残念ながら、歯周病は完全に治すことが難しい病気です。初期の歯肉炎なら完治の可能性はありますが、進行した歯周炎では、失われた骨や歯ぐきの組織を完全に元に戻すことは困難です。 ただ、適切な治療とメンテナンスで症状を大幅に改善し、進行を止めることはできます。 編集部: では、再発のリスクも高いのでしょうか? 三瀬先生: はい、治療後のメンテナンスを怠ると必ず再発してしまいます。歯周病は高血圧や糖尿病と同じように、一生付き合っていく慢性疾患ですので、「治す」というより「上手に管理する」という考え方が重要です。 ただ、歯周病の発症や進行は個人差もあり、歯磨きを何十年もしなかったのに歯周病にならなかった人もいれば、きちんと歯磨きをしていても歯周病になる人もいます。 これは遺伝的な要因や免疫バランスが関係しているため、個々の患者さんの免疫反応や体質も考慮しながら、治療やメンテナンスを進めていくことが大切です。