「貯金1,000万円が一瞬で消えた…」60代夫婦、老人ホームめぐり「老後破綻危機」直面のワケ
「下流老人」「老後破産」…なんとも辛い言葉が多くなった昨今。老後に必要なお金、貯められているでしょうか? 厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』などとともにみていきます。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
夫婦合わせて「年金20万円」だったが…
妻65歳、夫66歳のBさん夫婦。年金は夫婦合わせて20万円程度で、そのほかの収入はありません。貯金は現在約1,000万円。今後の人生について、強い不安を覚えていると語ります。 「月の支出も20万円ぐらいなので、年金を使い果たす生活が続いています。もちろん出費が多い月もありますから、貯金を切り崩すことも少なくありません。……実を言うと、老人ホームに入りたいんです。 家はローンを完済していて問題ないんですが、最近もう階段が怖くて、お父さんもいつか転んじゃうんじゃないか心配で。息子にも迷惑はかけたくないですし」 「老人ホームは、やっぱり落ち着いた部屋がいいじゃないですか。あまり質素なところでも嫌なので、ちょっと調べてはみましたが……入居一時金が高すぎる。1,000万円を超えていたんです。毎月の費用を見ても、気が遠くなりました。払うだけで貯金が尽きて、破綻します」 Bさん夫婦の嘆きは無理もありません。 老人ホームの入居代に関しては、利用者の所得が低い場合は補助給付が適用され、費用は数万円から十数万円程度に抑えられることもあります。しかし、一般的な企業で定年まで勤めたホワイトカラーの方が特別養護老人ホーム(特養)の個室ユニットに入所し、プライバシーを確保しながら暮らす場合、月額で約20万円の費用がかかるとされています。 さらに、両親の二人が施設に入所する場合、必要な費用はその倍の約40万円にもなります。 つまり配偶者や親を施設に預ける際には、本人の年金だけで介護費用を全て賄うことは非常に難しいと言えます。 なお入居一時金とは、入所時にその一部が初期償却され、残りが月額の一部として徐々に償却されていく費用のことをいいます。入居一時金がない施設では、その分月額が割高になるケースがあります。 償却年数が残っている状態で退居した場合、未償却金は返還されるシステムです。とはいえ、一気に1,000万円という大金がなくなってしまうことを心許なく感じる方もいるでしょう。