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’19 MotoGPを振り返る〈スズキ後編〉【ライダーとマシンのトータルで性能向上】

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WEBヤングマシン

MotoGP ’20シーズン開幕直前

アレックス・リンスが強大なライバルを従え、青い光が鮮やかに輝きながら、トップを走った。イギリスGPで接戦を制するなど、’19シーズンに2勝を挙げたスズキ。手堅い開発を続けた姿勢が結実した結果だった。ライダーの感覚をいかにマシン開発にフィードバックさせたのか、開発者へのインタビューから振り返る。 【GSX-RRリンス車 写真×12】

エンジンパワーとドライバビリティの相克

(前ページより続く) MotoGPマシンは極めて精巧にして繊細であり、それを走らせるライダーも鋭敏なセンサーの持ち主だ。彼らはわずかな差異を決して見逃すことはなく、それが精神状態に作用し、成績の優劣に直結する。 スズキGSX-RRは’18年型から’19年型に進化するにあたり、主にはエンジンの開発に注力した。「’18年は強いて言えばパワー不足が問題でした」と河内氏。 「これを解消するために、’18シーズン中から’19年仕様のエンジンを開発していました。内部パーツを全面的に見直して、ベンチテストでは非常によいパワーカーブも得られていたんです。 ところが、’18年の最終戦が終わってすぐに実走テストしたんですが、アレックスに『パワーは出ているけど、コントロール性に劣る』と言われてしまった」 トップエンドのパワーを追求すると、過渡のドライバビリティが悪化する。レースエンジンの開発において、もっとも起こり得ることではある。その時、どうするか。メーカーの風土が表出する選択が待っている。

〈MotoGP スズキ GSX-RR〉

最優先するのはライダーの感覚

佐原氏は言う。「パワーをバーンと出して、バランスが悪くなったとしても、ライダーに『多少はガマンしてくれよ』という考え方もあると思う。でもウチはそうじゃない。何を優先するかって、やはりライダーが求めるコントロール性、なんです」 「コントロール性に劣る」というリンスのコメントを受け、時間をかけて開発してきた仕様を諦めた。急きょ違う諸元のエンジンを作り直し、わずか1ヶ月ほどで形にして、MotoGPライダーのテスト禁止期間にあたる12月にテストライダーのシルバン・ギントーリが走らせ、手応えを得た。年が明けて’19年2月、マレーシア・セパンサーキットでようやくリンスがテスト。「これなら行ける」と頷き、仕様が決まった。ギリギリのタイミングだった。 「ドタバタしたのは確かですが、最終的にいい諸元のエンジンを作れました」と河内氏。 佐原氏は、「開発側としては苦労して絞り出した馬力でしたが、そのうち実際に使えたのは半分に留まった、という印象です。でも、ウチが重視しているのはあくまでもライダー込みでのパッケージ。マシンだけ突出するのではなく、ライダーがマシンに乗った時に100%のパフォーマンスを発揮することをめざしています」 この慎重さ、手堅さはいかにもスズキらしいが、とかく開発スピードが求められる最高峰レースの現場にあって、デメリットにもなりかねない。 だが今のMotoGPは、ECUの共通化やタイヤのワンメイク化、そしてシーズン中のエンジン開発凍結など、開発コストの増大を抑える施策が採られている。逆に言えば、スズキのように「小さな規模」で戦うチームにも勝機がある、ということになる。リンスがマルケスからもぎ取った2勝は、その証明になっているのだ。

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