なぜ国や自治体の情報公開制度は“全面黒塗り”ができるのか…現場の裁量で開示拒否できるデタラメ行政の実態
条例の条文をそのままコピペ
なお、後日、筆者の取材に対して南海電鉄の担当者は「実際にどこを消してくれとかいう話は一切していない。 一例として、単価などは非開示にしてほしいとはいったが」とコメントし、文書開示にあたって、具体的な非開示箇所をほとんど指摘しなかったことを認めている。 改めて和歌山市情報公開条例をみてみると、開示しなくていい例外として、第7条1号~6号までに列挙されているのは、(1)個人情報、(2)企業秘密、(3)意思形成過程の情報、(4)事業の公正な遂行を妨げるもの、(5)公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれがある情報、(6)他の法令又は条例の規定により、公にすることができない情報であり、前出の不開示理由一覧に記載されている内容と、ほぼ一致している。 というか、不開示理由は、条例の条文をそのままコピペしているだけだった。 つまり、和歌山市は、条例で開示しなくていいとされている例外規定を総動員して、文書を黒塗りしてきていることがわかった。 ちなみに、この開示しなくていい例外の「不開示情報」は、和歌山市に限らず、全国どこの自治体の情報公開条例でも、細かい表現は微妙に異なるものの、ほぼ同様の規定が設けられている。 また、国の行政機関を対象とした、行政機関情報公開法にも、表現は微妙に異なるが、こちらも、ほぼ同じ趣旨の規定が見つけられる(図表3)。 こうしてみていくと、国や自治体の情報公開制度は、現場の裁量によって、いくらでも開示拒否できる〝抜け道〞が用意されており、この制度が適正に運用されるかどうかは、開示請求の対象となった事業の担当課職員の情報公開制度についての理解の深さと良識いかんにかかっているといえる。 文/日向咲嗣
---------- 日向咲嗣(ひゅうが さくじ) 1959年、愛媛県生まれ。大学卒業後、新聞社、編集プロダクションを経て、フリーランスに。雇用保険や年金制度など、主に社会保険分野のビジネス書籍で執筆活動を展開。2018年には、長年取り組んできた失業関連の著作が評価されて、貧困ジャーナリズム賞を受賞。2015年頃からはニュースサイト「ビジネスジャーナル」「週プレNEWS」などでツタヤ図書館問題の連載を開始。数々の地方自治体に情報開示請求を行い、公文書の闇に迫る活動を続けている。 ----------
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