村田諒太が挑む強敵と拳を交えた元世界王者が勝利を予想
「これは社交辞令でもなんでもなくて村田が勝つと思います。確かにヌジカムはボクシングが上手いし、倒された後の回復力も驚異的です。クィン戦もレミュー戦も倒されても何度も起き上がってきました。それでも村田がパワーで圧倒してプレッシャーをかけると耐えきれないのではないですか。タフなので一発では終わらないかもしれないですが、何度かのダウンシーンを村田が演出して、最後はTKOで勝つと予想します」 おそらく石田の予想が村田が王座奪取を果たすパターンだろう。 エンダムはフック系のパンチが大きくなるケースがあるので勇気を持ってカウンターを合わせると当たる。2015年にエンダムに勝ったレミューは、エンダムの打ち終わりに強引な左をヒットさせてダウンを奪っていた。村田は、威力のある右のストレートに絶対的な自信を持っているが左フックにこそ勝機を見出すべきかもしれない。 ただ予想の難しいのは、村田がブロックを固めたプレッシャーでエンダムのステップワークを潰して、どこまで追い詰めることができるのか、という点。ここまでの12戦でエンダムクラスのスピード、テクニック、パンチ力のいずれかを持ったボクサーと1試合も拳を交えていないため、その対応力が“たぶん大丈夫だろう”の範疇にとどまっている。エンダムも「ここまでの12戦で村田が戦ってきた相手と俺は違うんだ」と、村田が本物の世界ランカーと前哨戦をやってきていないという盲点を指摘していた。 だが、村田はロンドン五輪で世界の頂点に立った。その潜在能力に疑いはない。そして、彼が今、哲学書を読み哲学的な文言を語ろうが、母校の名門、南京都高(現在・京都廣学館高)のボクシング部で培った“南京魂”と呼ぶ、ここ一番での闘争本能(大阪弁でいうヤンキー魂)が根底にある。その伝説を紹介すると、いくら文字数があっても足りないが、それこそが逆境で村田が持つ強さなのである。 「金メダリストは世界王者になれない」という日本ボクシング界のジンクスを覆し、そして、イチロー、錦織圭並みに、グローバルなミドル級という舞台で、日本人ボクサーの爪痕を残す。ゾンビのようなタフさを持つエンダムを相手に死闘は避けられないが、有明コロシアムに足を運ぶ人たちは歴史の証言者となるだろう。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)