内臓の腫瘍が破裂して「死を覚悟した」という中江有里、搬送の様子と“更年期のリアル”を語る
表現者としてすべての経験を糧に
心身共に健やかな毎日を送るためには、メンタルを整えることも大切だ。 「例えば、オリンピックでがんばっているアスリートの人に対して自分の気持ちをのせていくようなことって、誰にでもあることだと思うんですね。腎血管筋脂肪腫で入院した際の経験で、自分が苦しいときでも、がんばっている人を応援することで元気になっていくことを実感しました。私はプロ野球が好きなので、ほぼ1年近く楽しめるものがあるのは幸せなことだなぁと思っています」 作家としても活躍中の中江さんは8月に最新の長編小説『愛するということは』を上梓したが、作品の一部は腎血管筋脂肪腫での入院の前後に執筆されたものだという。 「書くことも、演技をすることも、歌うことも、表現をする仕事というのは、どんな経験でもまったく無駄にはならないんですよね。腎血管筋脂肪腫の破裂はとてもつらい経験でしたが、幸いにして命を長らえることができました。この経験を何らかの形で生かして、誰かの助けや救いになることにつながっていくといいなと思っています」 来年には26年ぶりに主演を務める映画『道草キッチン』が公開され、歌手としてもアルバムをリリースするなど多忙な日々を送っている。そんな中江さんが、表現者としてこれから発信していきたいことを伺った。 「ついこの間、10年ぶりに福島の被災地を訪れてきたんです。原発事故から13年がたって、被災地に関する報道が減り、現状が伝わりにくくなっていますよね。ひとりでも多くの人に今の福島の被災地の状況を知っていただけるよう、私の目で見てきたことをいろんな形で伝えていけたらと思っています」 なかえ・ゆり●1973年大阪生まれ。法政大学卒。1989年に芸能界デビューし多数の映画、ドラマに出演。2002年『納豆ウドン』で第23回BKラジオドラマ脚本懸賞最高賞受賞。俳優、歌手、作家、書評やコメンテーターなど多方面で活躍中。『愛するということは』『万葉と沙羅』など著書多数。 取材・文/熊谷あづさ