中国鉄道メーカー、国際鉄道見本市で「水素車両」を積極展開の裏側 進出難航の「欧州向け」は出展せず
ヨーロッパ各国は、中国に対する警戒感をより一層強めており、今後しばらくはヨーロッパ市場で受注を獲得する可能性は薄くなるだろうと予想される。 その影響もあって、今回のイノトランスではあえて、ヨーロッパ市場向けの車両展示は行わず、純粋に自社の技術を世間に知ってもらおうという作戦に至ったと考えるのが自然だ。 CRRCが鉄道メーカーの世界シェア首位となって、まもなく10年となる。効率性と国際競争力の向上を目的として、中国国内の2大メーカーだった中国北車(CNR)と中国南車(CSR)が合併して2015年に誕生したのが国有企業CRRCで、合併以来世界シェア1位を保持し続けている。
売り上げの大半は中国国内の需要で、国内向け車両の90%が同社製品となっていたが、合併以降はアメリカやアジアに工場を建設、積極的に海外展開を進めていた。国内需要だけでは、新車投入が一段落したあと、売り上げが頭打ちになるリスクがあるため、国外へも進出しようという目論見であろう。 アメリカでは、地下鉄車両や近郊用客車など、小規模ながら着実に契約を獲得し、存在感を示していた。アジアでは、インドネシアの高速鉄道を筆頭に、こちらも同社が積極的な進出を果たしていた。となると、次に目指すべきは、日本と同じ鉄道先進地域であるヨーロッパ市場であった。しかしふたを開けてみれば、予想以上に参入の壁が高かったことに加え、ウクライナ情勢がその困難さに輪をかけた形となった。
■見込みのある市場に注力しては? だが、同社はヨーロッパ市場への参入をあきらめたわけではない。EUの中では異例のロシア寄りの立場を取るハンガリーに、CRRCが工場を設けることが明らかになっている。今年5月に中国の習近平国家主席がブダペストを訪問した際には、オルバン首相との会談で、ハンガリーの鉄道計画を中国の一帯一路構想の対象となるインフラプロジェクトのリストに含めることに合意したことを発表している。