中国鉄道メーカー、国際鉄道見本市で「水素車両」を積極展開の裏側 進出難航の「欧州向け」は出展せず
世界最大の鉄道メーカーとして君臨する中国のCRRC(中国中車)。2年に1度、ドイツ・ベルリンで開かれる「イノトランス」(国際鉄道見本市)ではこれまで、同社が何としても開拓したいヨーロッパ市場向け車両のほか、車体の主要構造にカーボンファイバーを用いた地下鉄車両の展示を行うなど、意欲的に自社技術を売り込んでいた。 【写真を見る】CRRCが出展した「玉虫色」の水素燃料車両とゴムタイヤ式トラム。過去のイノトランスで展示したヨーロッパ向け電気機関車や電車の試験線での様子も カーボンファイバー製車両は大きな注目を浴び、後に中国国内では営業運転も開始されている。
では、2024年のイノトランスにCRRCはどのような車両を持ち込んだのか。 ■「ヨーロッパ向け」車両は展示せず 今回、同社が会場に展示したのは、水素燃料式都市間特急列車「CINOVA (シノヴァ)H2」と、次世代型トラム車両「CRRC ART(AUTONOMOUS RAIL RAPID TRANSIT)」の2車種だ。 【写真】CRRCが出展した「玉虫色」の水素燃料車両とゴムタイヤ式トラム。過去のイノトランスで展示したヨーロッパ向け電気機関車や電車の試験線での様子も
CINOVA H2は、水素燃料を動力源とする最高時速160~200kmの車両。車内には転換クロスシートを設けているが、通勤電車のロングシートのように横向きにもセットできるという点が面白い。航続距離も1000km以上(時速160km以下で走行した場合)とかなり長い。 CRRC ARTはバッテリー駆動のトラムだが、ゴムタイヤを装備しており、新たに軌道を敷く必要がない。道路上に白線を引くだけで、車両に設置されたセンサーがそれを追随する仕組みとなっている。
初期投資を抑えながら導入可能というのが売りだが、天候状況によって白線が識別困難となった際の制御などは、今後の課題と言えるのではないだろうか。また展示された車両はバッテリー駆動だが、水素燃料のオプションもあるとのことで、顧客に合わせて動力源を変えることが可能となっている。 いずれも中国市場向けの車両で、今回の展示のためだけに本国から輸送されたもので、同社の強い意気込みを感じる。とはいえ、同社が売り込みたいヨーロッパ市場向けの車両が出展されることはなかった。