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地方創生は「既存インフラ」の活用にかかっている

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PHPオンライン衆知

コロナ禍によってテレワークが普及したこともあり、ニューノーマル時代の国土形成や住まい方に多くの人が関心を寄せている。人口激減期と重なる「コロナ後」の街づくりはどうあるべきなのか。かねてより国土政策に取り組んできた自民党の石原伸晃元国土交通大臣と、人口問題の第一人者で、このほど『未来を見る力』(PHP新書)を上梓した人口減少対策総合研究所の河合雅司理事長が語り合った。

地元の組合長との一杯で、洋上風力発電が実現する

(石原)いまや自民党で、国土交通大臣の経験者は、私一人になってしまいましたから、自分がしっかり街づくりを進めなければならないという思いを持っています。 たとえば地方の「病院難民」「買い物難民」といった問題は、テクノロジーの力で十分解決できると考えています。国土交通省の管轄する道路で、無人の自動運転システムをつくり、移動が困難な方々に利用していただくのです。 同様に、今年からやっと予算化されたスマートシティ構想の中でも、ボタンを押せば救急車が来る、バスがいまどこを走っているのかが瞬時に分かる、電力が非常に節約できるといった新技術が想定されており、これらが実現すれば高齢者にとって大変住みやすい街になる。 それらをパッケージにして実際に体験できる街を五つくらいつくろう、協力してくれそうな首長を紹介するから――と常々言っています。 さらに、私は平成10年くらいから継続して、環境に配慮した地域づくりにも取り組んでいます。例えば、五島列島に野口市太郎さんという素晴らしい市長の方がいらっしゃるのですが、野口市長と協力して、同市に洋上風力発電のシステムをつくりました。 環境省のモデル事業だったのですが、すんなりとはいきませんでした。漁業権をはじめとして、地元の方との良好な関係をつくり維持していくことが何よりも重要でした。そんな時政治家ができることは、地道な話し合いだけです。 私は役人10人と一緒に現地に訪れました。五島市には漁業の組合が三つあったのですが、組合長たちと酒を飲んで、口説きに口説きました。向こうはお酒が強いですから、こちらも手勢は多いほうがいいと思い、10人で乗り組んだわけです。みんなで飲んでると、そのうち役人が3人くらい倒れ始める(笑)。 ただ話すだけではなく、彼らの要望にも応えました。実証の済んだ洋上の風力発電機のおもりを活用し、漁礁をつくって漁師さんたちが希望された場所に設置しました。するとその漁礁に魚が寄ってくる。さらには風力発電機そのものにも魚が寄ってくるようになりました。 さらに燃料電池で動く漁船をつくって寄贈しました。電動の難しさは、洋上に出た時、電力ダウンに陥ると、バックアップの動力源がなければにっちもさっちもいかなくなることです。しかし、近場であれば問題ない。地元に対してそのようなサポートを行ったことで、洋上風力発電が地元の方に受け入れてもらっているんです。 野口市長は五島市を環境のまちにしたいとおっしゃっています。三菱自動車の電気自動車であるアイ・ミーブを使ったりしているんですよ。 (河合)五島列島の洋上風力発電は大きな話題を呼びましたね。陰でそんなご苦労があったのですか。 (石原)エネルギー問題でもう一つ紹介させていただくと、森林のまちである飛騨高山でも、化石燃料に頼らないまちづくりが進められています。市長は国島芳明さんという方で、この方も大変魅力的な方です。 森林のまちですから、木材やチップにはかなり恵まれており、それらを利用すればバイオマス発電で市のエネルギーを賄うことができる。しかし安定エネルギーにするためには、それらを燃やし続けなければならない。 そのシステムをつくるための支援策について、助言をさせていただきました。 このように、気のきいた町では、化石燃料に頼らないまちづくりができています。もちろんこの二つの町だけでありません。他の例を挙げますと、各地で行われている小水力発電も、小規模な電力を生み出すことができます。無人でできるので、雇用は生みませんが……。 石油を使わないエネルギーシステムができあがると、あちこちから視察に来るので、地元の方の誇りになるんですね。

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