Sexy Zone 佐藤勝利が脱ぎ捨てていく“いい子”の鎧 『Endless SHOCK』など通して引き出されてきた表現の余白
Sexy Zoneの佐藤勝利が、また一回り大きくなった印象だ。この春、KinKi Kids 堂本光一の主演舞台『Endless SHOCK -Eternal-』にて、ライバル役・ショウリを好演した佐藤。『SHOCK』シリーズは、生まれて初めてエンタメに触れた舞台であり「僕の人生を変えた作品」と話していた憧れのステージでもあったことを、ラジオ『VICTORY ROADS』(bayfm)でも熱く語っていたことを考えると、この経験は大きな財産になったに違いない。 【画像】浴衣も似合っている佐藤勝利 6月26日、同番組では佐藤が舞台について振り返る一幕があった。憧れの舞台、しかも短い準備期間で『Endless SHOCK』の本編とスピンオフ作品である『Eternal』の2本を手掛けたことから、さぞかし苦労話が飛び出すのではと思ったのだが、語られたのは舞台裏のほのぼのエピソードばかり。堂本光一に頼んだという暖簾はまだ届いていないこと。さらに佐藤と旧知の仲である堂本光一のマネージャーがオーダーを取ったという特製の『SHOCK』ジャージについても、いまだに手元にないということで「お金は払ったぞ!」「本番前にせえよ!」とツッコみつつ笑いを誘う。 また、上演1900回を数える舞台『SHOCK』シリーズにおいて、ライバル役の歌う曲は歴代演じてきたメンバーによって異なったが、佐藤が出演した今作以降は「MOVE ON」に固定されるという。この先も続く『SHOCK』シリーズの新たな伝統の始まりを築く大役を担った佐藤だが、感想としては短く「『MOVE ON』はめちゃくちゃ難しかった」と、少し照れくさそうに笑ったような声で語ったのが印象的だった。 思い返してみればアイドルとしての佐藤の歩みは、いつだって期待とプレッシャーのド真ん中にいきなり立たされる人生だった。ジャニーズ事務所に入ってわずか約1年という短期間でSexy ZoneとしてCDデビュー。しかもその立ち位置は「永遠の0番」と堂々のセンター。佐藤の容姿については、多くのスターを生み出してきたジャニー喜多川氏の口から「特別かっこいい」と言わしめたほどだ。 だが、それは一方で成長過程もすべてスポットライトに照らされる運命でもあった。通常ジャニーズアイドルは、ジャニーズJr.として先輩のバックにつき、実力と自信をつけてからデビューという夢を掴む。だが、佐藤はそのプロセスを一気に飛ばしてデビューした形に。誰かの背中を追いかけたり、横に並ぶライバルと切磋琢磨したりすることなく、いきなりステージの真ん中に立つという苦悩は誰かと共有するのが難しい。 そう考えると、堂本光一が会見などで佐藤のキャスティングについて「ある意味あの(ライバル)役は勝利にあっていないと思う」と語っていたのも頷ける。多くのジャニーズアイドルが経験したはずのコンプレックスや焦燥感とは全く異なるものを背負った佐藤が、ライバル役を演じるという難しさ。それでも今回佐藤を抜擢した理由について、堂本光一は「俺的には役には合ってないけど、何かそこで面白い反応が生まれるといいなと思って」と、ラジオ『KinKi Kidsどんなもんヤ!』(文化放送、※3月7日放送回)で話していた。 実際に、佐藤はこれまで様々な作品でジャニーズの先輩や他グループのメンバーと共演を果たすたびに、新たな一面を見せてくれた。努力家で真面目な人となりから、どこか“完璧ないい子”という印象を持たれがちな佐藤。だが、作品の中に生きる役柄を通じて、次々とその“いい子”の鎧を脱ぎ捨てていく。“アイドル・佐藤勝利”としては言葉にできなかった何かが、役を通じて語りかけてくるような感覚だった。 なかでも、大きく一歩踏み出したように感じたのは、脚本家・野島伸司が手掛け、佐藤の連続ドラマ初主演作品となった『49』(日本テレビ系)。佐藤が演じたのは高校生の息子の体に父親の魂が入り込んだというイレギュラーな設定だったが、当時King & Princeとしてデビューする前の神宮寺勇太をはじめとする同世代のジャニーズJr.と共演することで、同じ立場のはずなのに少し違う視点から彼らと接していく、複雑な心境が非常にマッチしていたのを思い出す。 また、お笑い芸人のじろう(シソンヌ)、秋山寛貴(ハナコ)、賀屋壮也(かが屋)、水川かたまり(空気階段)が脚本を手掛けたコメディドラマ『でっけぇ風呂場で待ってます』(日本テレビ系)では、お笑い好きな佐藤のノリの良さも引き出された印象。MC力が高く、愛あるイジりも得意とするKis-My-Ft2の北山宏光との共演もきっと大きかったに違いない。クランクアップ映像では涙を抑えきれない佐藤の素の表情も捉えられており、その飾らぬ涙にドキッとさせられた。奇しくも、今回『Endless SHOCK』の博多公演では、佐藤と入れ替わりで北山がライバル役を演じることになっているのも、嬉しいめぐり合わせでもある。 多くのエンターテイナーが経験を重ねて洗練されていくのに対し、佐藤の場合は作品に出演するごとに人間味あふれる部分が引き出されてきた。観る者が共感する“隙”や“余白”といった部分がチラリと見えてくるような、完璧に見えていた佐藤が、グッと近づく瞬間。それが堂本が「面白い反応」と呼ぶものだったのかもしれない。 そして、その表現力の広がりはSexy Zoneの歌にも表れている。6月1日にリリースされたアルバム『ザ・ハイライト』では、曲ごとの世界観に合わせて歌い方が全く異なるのがわかる。もちろん佐藤にとって、Sexy Zoneというグループそのものも大いに彼を成長させた場。キャリアと実力を備えた中島健人と菊池風磨、そして佐藤と同じく短時間でデビューすることになった松島聡とマリウス葉。メンバー構成的にも年上組、年下組の真ん中に立つことになった佐藤は、ときにはSっ気のある言動で場を和ませたり、ときにはメンバーを引っ張るような頼もしさを見せたり……そのバランスを取りながら人間的な器を広げてきたのだ。 そんな佐藤が、次に挑むのは秋元康が企画、原作を務めるホラードラマ『赤いナースコール』(テレビ東京系)というから胸が弾む。予測不能の事態に巻き込まれていく主人公を、佐藤がどれほど泥臭く魅せてくれるのか。また新たな作品との出会いにより、表現者として大きく成長していく佐藤が楽しみだ。
佐藤結衣