「手術中汗を拭いてもらう」外科医が実はいない理由とは? ドラマと現実ではこんなにも異なっている!
手術は病気を治し、人を健康にするために行われるが、一方で健康を害するリスクにもなりうる。手術で病気は治ったけど、手術の合併症によって状態が悪くなるということも残念ながらありえるのだ。 そのため、手術を行う前には必ず、手術によってよくなる可能性と悪くなる可能性を考え、そのバランスを検討し、患者にもその情報を伝えて理解してもらい、最終的に行うかどうかの判断をする。なので、1%の確率でしか成功しない手術ならば、やることはないのである。
手術をしなければ100%死んでしまう、でも手術すれば万が一の可能性で救えるかも......という状況はほとんどありえないのだ。外科医が「今から99%成功する手術をします」と言ってもちっともドラマチックではないので、ドラマや漫画では多少脚色されているのだろう。 ■「成功の定義」も現実はドラマとは異なる そもそも、何をもってして成功というのか、“成功”の定義も必要である。手術室を生きて出ることが成功の手術もあれば、20年先まで健康に生きて初めて成功といえる手術もある。心臓の手術は完璧にうまくいったが、合併症で脳に異常が起きたらそれは失敗なのだろうか?
そのあたりの定義づけも、外科医と患者の間で共通の認識、共通のゴール、共通の成功の定義を持つことが、とても大事なことである。
北原 大翔 :シカゴ大学心臓外科医・NPO法人チームWADA代表理事