「手術中汗を拭いてもらう」外科医が実はいない理由とは? ドラマと現実ではこんなにも異なっている!
このとき、体の温度を低くすると、心臓の代謝を抑えることができるため、血液が流れていない間に心臓にかかるダメージを少なくすることができるのだ。 これは、冬眠中の動物が体温を低くして代謝を抑えることで、何も食べずに冬を越すことができるのと同じである。手術によっては、患者の体温を20°C以下に落とすこともあるのだ。極寒である。 ドラマでよくあるシーン2:手術室の上の小部屋から手術を見学する 偉い医者たちが手術室の上にある部屋からガラス越しに手術を見ているところがよく描かれるが、この部屋は実際に存在する。
ただ、実際にはそこからでは手術の様子はまったく見ることはできない。 手術を受ける患者の周りには外科医や看護師などたくさんのスタッフがいるし、胸の中など体の深い部分を手術するときはその場にいる外科医でも見えないことがあるくらいなので、上の部屋からそれを見るのはほぼ不可能なのだ。「あの子かわいいね」とか「あいつさぼってんな」とか、そんなことくらいしかわからないだろう。 ただし、手術室の天井にはビデオカメラがついているので、それを見ればどんな手術をしているかはわかるようになっている。外科医によってはヘッドカメラをつけて、自分が見ているものをそのまま映像として映し出す者もいる。
ヘッドカメラの映像はとてもクリアなので、手術の振り返りや若手の教育にとても有用である。ただ、手術後に外すのを忘れてそのままトイレに行ってしまうと、大変なことが起こる。 ドラマでよくあるシーン3 きれいな列をなして行う教授回診 教授を先頭に医者が列を作って患者の病室を診て回る、いわゆる教授回診のシーンは、現実にも存在する。ドラマのようなきれいな列を作る教授回診は見たことがないが、教授回診にはその診療科ごとの特徴や教授のクセが出る。私も学生時代には色々な診療科の教授回診を経験した。
例えば、ある診療科の教授は、回診中は必ず階段を使うので、毎回1階から7階まで全員で階段をのぼらなくてはいけなかった。教育目的で日本語禁止回診をする英語好きの教授がいたり、患者の前で学生にむずかしい質問をして、答えられないと「僕がこいつを教育してちゃんとした医者にするんで安心してください」と言って毎回マウントをとる“マウント教授”がいたりもした。 学生時代は何もわからずにただついて回っていただけなので、教授から質問をされてそれに答えられず、「勉強不足だ」と怒られることはよくあった。それからは心を改めて勉強に努め、今では怒られることはなくなり、私自身が回診の列の先頭に立つこともある。医者になってからは、私もだいぶ改心したな。