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麻生財務大臣が突然「マスコミと財務省の批判」をはじめたワケ

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現代ビジネス

「狼少年」よばわり

 5月12日、麻生太郎財務相の記者会見で、予想外の事態が起きた。マスコミ、そして財務省自身を、財政崩壊をいたずらに煽る「狼少年」だと揶揄したのである。 【写真】大企業50社を実名公開、コロナ不況「生き残る会社・心停止する会社」  「コロナ対策」を含めた大規模な経済政策の編成により、2020年度の国債発行額が過去最大となるなか、財務省はいつものことながら、あの手この手で財政危機をアピールしている。  ところが、そのトップが組織の見解とは食い違う「楽観論」を示したのである。詳しくはこうだ。  「国の借金が日本の財政への信認を損なうのではないか」という記者の質問に対して、麻生氏は「国債が増えても、借金が増えても金利が上がらないというのは普通私達が習った経済学ではついていかないんだね、頭の中で。今の答えを言える人が多分日銀にもいないんだと思うけれどもね。そこが問題なんだ」と答えた。  また、「金利が上がるぞ、上がるぞと言って狼少年みたいなことをやっているわけだよね。だけど現実問題としては本当に上がっていないんだよ」とも回答した。財務官僚には耳の痛い話だろうが、意外にも、この発言に大きく反応するマスコミはあまりいなかった。  麻生氏は、これまで公には「財政再建は堅持する」との姿勢を貫いていた。それを崩したのは、5月22日に発表された麻生財務大臣と黒田東彦日銀総裁の共同談話の伏線だった、と筆者はにらんでいる。財務大臣と日銀総裁の共同談話は異例で、イギリスのEU離脱を問う国民投票で、世界の金融市場が不安定化した'16年6月以来、およそ4年ぶりだ。  「日銀と政府の関係は、きちんと同じ方向に向いていることがすごく大事なことだ」。共同談話での麻生氏の言葉は深い意味を持つ。ある政府関係者も、この共同談話について、「政府と日銀との連合軍」と発言していたのを筆者は聞いた。  近ごろ、政府と日銀にはすきま風が吹いているように見えていたが、コロナショックに際し、財政政策(政府)と金融政策(日銀)をしっかりと一体化させよう、という決意を改めて示したのである。コロナショックは戦後最悪、戦前の大恐慌に匹敵するほどの経済危機である。それだけに、政府もかつてないほどの危機感を示している。  政府と日銀の「連合軍」が行う政策では、政府が大量の国債発行で財源調達し、日銀がその国債を買い入れる。これによって政府が巨額の有効需要を創出でき、不況の下支えをする。  この政策のリスクは、インフレ率が高まることだ。だが、たしかに市場の供給は減少したものの、需要サイドは自粛要請などによってはるかに落ち込んでいる。このため、当面心配すべきなのはインフレよりもむしろデフレであるから、方向性として間違いではない。  世間とズレた一面が取り沙汰されることの多い麻生氏だが、財務官僚の言いなりでは、政治家として将来に禍根を残すと感じ、財務省の体質批判に転じたのだ、と信じたい。  それにしても、この期におよんで、財政再建とは片腹痛い。戦争に匹敵する非常時に誰が財政を気にするのだろうか。「国破れて財務省あり」となってしまっては、元も子もない。  『週刊現代』2020年6月6日号より

ドクターZ

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