「生まれた時にできた道」高知主将、学校と深すぎる縁 センバツ
「生まれた時にできた道」。自らの球歴をそう表現する。第95回記念選抜高校野球大会で2年連続で初戦突破した高知は23日、履正社(大阪)との2回戦に挑む。チームを束ねる二塁手の西村侑真主将(3年)には学校と深すぎる縁がある。 【写真まとめ】北陸vs高知、逆転劇を振り返る ◇「お父さんを目標にやってきた」 かつての監督で、先生でもある父に雄姿を届けた。西村主将は18日の北陸(福井)戦に「9番・二塁」で先発出場。4打数無安打に終わったが、堅い守りとリーダーシップでチームの勝利に貢献した。北信越王者との接戦を4―1で制した後のコメントに感慨を込めた。 「お父さんがいなかったら、野球を始めていなかった。両親に感謝の気持ちでいっぱいです」 西村主将の父・雅仁さん(42)も高知OBで主将を担った。話題は親子2代の主将に尽きない。父は2018年から系列の高知中野球部の監督を務め、学校では社会科教諭として勤務する。父から中学時代、監督と選手として指導を受けた。 幼い頃、父は高知高野球部のコーチで寮監でもあった。だから、物心つく頃にはチームと白球が目の前にあった。グラウンドの隅で遊び、練習後は部員たちが可愛がってくれた。小学3年で少年野球を始め、進学先に高知中を選ぶのは自然な流れでもあった。 親子ともに難しい距離感で過ごした中学の3年間。仲間は「やりにくそうだった」と、その関係性をおもんぱかる。父は「グラウンドでは誰よりも厳しく接してきたつもり。今思えば、怒らなくてもいいことで怒っていたのかな」と振り返る。 西村主将には、もう1点「やりにくさ」があった。母の雅子さん(42)も高知高の国語教員。学校ではみんなができるだけ、接点を持たないようにしてきた。両親が勤める特別な環境の中で、学校生活を送りながら練習に励んできた。 そして、いつしか、尊敬する父が果たせなかった夢舞台を目指すことを心に決める。「どうしても高知高のユニホームを着て甲子園に立ちたい」。母に宣言した。 父は今回、その白のユニホームに袖を通し、プレーする息子の姿を初めて見たという。「中学の大会が重なって見ることができなかった。うらやましさもあるし、感慨もあるし、不思議な感じ。甲子園に出た時点で『おやじ超え』です」と笑う。 西村主将は「お父さんを目標にやってきた。謙虚な人なので、ずっとそこを見習ってきた。キャプテンとして成長した姿を見せられたかな」と語る。 さらなる「おやじ超え」と目標のベスト8入りを目指し、チームを導く。【長宗拓弥】