先進国の大人たちの「読解力が大幅に低下」していると判明─日本の状況は?
世界中の大人たちが苦戦
先進国の5人に1人は、数的思考力と読解力に関して、10歳程度の子供たちに求められる以上の能力を有していない──経済協力開発機構(OECD)が10年ごとにおこなう「国際成人力調査」から、そんなショッキングな事実が明らかになった。 【画像】先進国の大人たちの「読解力が大幅に低下」していると判明─日本の状況は? OECDは38の加盟国のうち、31ヵ国に住む16~65歳の約16万人を対象に「数的思考力」、「読解力」、「問題解決力」の3つを調査し、12月10日に結果を公表した。 OECDは報告書で、「ほとんどの加盟国において、大人たちの数的思考力と読解力は、過去10年間に大幅に低下したか横ばいの状態にある」と結論づけた。とくに読解力の低下が著しく、大幅な向上が見られたのはフィンランドとデンマークの2国のみだった。 フィンランドは読解力のみならず、全3分野で1位だった。日本は読解力と数的思考力で2位、問題解決能力ではフィンランドと並んで1位だった。他にも、スウェーデンやオランダ、ノルウェーなどの国々が総合上位にランクインした。 読解力に関しては、ニュージーランド 、スロバキア、韓国、リトアニア、ポーランドといった国々で大幅な低下が見られたほか、これらの国ほどではないものの、米国やオーストラリア、ハンガリーも前回に比べて着実にスコアを落とす結果となった。
仕事だけでなく、人生そのものに影響
世界的な読解力低下の要因のひとつに、移民の増加が挙げられる。異なる国の言語でテストを受けた場合、点数が下がる傾向にあるのは想像に難くない。だが、理由はそれだけではないかもしれない。 英誌「エコノミスト」は、SNSなどの使用により、以前に比べて長く複雑な文章を読む機会がはるかに減っているのではないかという、OECDの教育分野の責任者、アンドレアス・シュライヒャーの意見を紹介している。 報告書によると、読解力に関しては女性よりも男性のほうが著しく低下していた。男性は数的思考力と問題解決能力において相変わらず女性を上回っているものの、男女間の差は縮まりつつあるようだ。 また、多くの国々で、これらの能力の差が広がっているのもたしかだ。日本も例外ではなく、数的思考力でも読解力でも、10年前の前回と比べて、できる人とできない人の差が大きくなっていた。 日本の場合、数的思考力では最も点数の低い「レベル1」に該当する人の割合はそれほど変わらなかったのに対し、高得点を記録した「レベル4以上」に該当する人の割合は増加。反対に、読解力では「レベル4以上」の人の割合は変わらなかったのに対し、「レベル1」に該当する人の割合は増加していた。 OECDは今回の調査と並行して、聞き取り調査もおこなった。その結果、今回の調査でトップレベルの成績を収めた人々は、成績が最低レベルだった人々よりも収入が75%多いことが判明した。 こうした能力は仕事以外にも影響を及ぼすようだ。成績が良い人ほど「幸せで健康状態が良い」と回答する傾向にあったのに対し、成績が悪かった人は他者への不信感がより大きく、「政治的疎外感を感じる」と回答する割合が高かったという。
COURRiER Japon