「胃腸は丈夫」と思っていた62歳、検査を受けると胃と大腸の両方にがん…大腸がん患者の10%に他臓器のがんも
胃と腸の整え方
消化器内科医の松生恒夫さんが、豊富な診療経験を基に、胃や腸の整え方を紹介します。 【図解】のみ込んで行う大腸内視鏡検査とは
多重がんという言葉があります。胃がんと乳がんのように別のがんを経験される方は少なくありません。クリニックで胃と大腸の内視鏡検査を行っていると、同時に両方の臓器にがんが見つかる方がいます。患者さんは大変なショックです。この二つのがんは、早期で見つけることができれば、内視鏡でがんだけを取り除く治療になります。日々、検査をしていて思うのは、気になったらちゅうちょせず、内視鏡の検査を受けていただきたいということです。二重がんの例を紹介します。
便潜血反応検査陽性、ヘモグロビン低値
62歳の会社員の男性は、これまで胃腸に大きな問題を感じたことはなく、飲み過ぎや食べ過ぎの時におなかを壊したり、胸焼けがしたりする程度。2、3日でよくなりました。健診の血液検査でヘモグロビン(血色素)がやや低く、併わせて受けた大腸検診の便潜血反応検査が陽性になりました。ヘモグロビンの数値が低いのは貧血の兆候なのですが、胃がんや大腸がんの出血でヘモグロビンが失われ、低く出ることがあります。そこで精密検査を希望して来院されました。
大腸がんに続き胃がん発見
大腸内視鏡検査を行うと、S状結腸に12ミリのへいたんなポリープが見つかり、ワイヤをかけて切除。病理検査に出すと、一部にがんが見つかりました。早期の大腸がんなので他の臓器への転移などの心配はありません。軽い貧血はこの大腸がんによるものと考えられました。 しかし1年以上前の健診でもヘモグロビンがやや低かったので、他の臓器からの出血の可能性もあります。念のために胃の内視鏡検査をしてみると、今度はやや進行した胃がんを発見。自覚症状はありませんでしたが、手術が必要な病変だったので、近くの総合病院の消化器外科を紹介しました。 「胃と腸は丈夫だと思っていたのに、まさか両方にがんがあるなんて」とこの男性は驚いていました。幸い大腸がんは検査時の内視鏡切除で済み、胃がんの方も内視鏡で胃の粘膜をそぎ取る手術が可能でした。以前と変わりなく元気にされています。