500円で駅まで送迎 「高齢者ライドシェア」移動支援だけじゃない地域への効果 #老いる社会
「例えば、以前このテスちゃんがヘルニアになってしまったとき、お願いしたらすぐに来てくれて、獣医さんに連れて行くことができました。また、旅行で朝早く福島駅に行きたいときも、タクシーは呼んでも来てくれないことがあるけど、『おでかけサポート』なら頼んだ相手が了承してくれれば来てくれます。本当にありがたいです」 宍戸さんにとって「おでかけサポート」はただの移動手段ではない。気心の知れた近所の仲間の車に乗り、車中で和気あいあいと会話ができることも楽しみな時間になっているという。
利用者も運転者も「地域の住民」のみ シンプルな仕組み
「移動困難者」が社会問題になっている。今年4月から「日本版ライドシェア」が導入されたが、これは主に都市部や観光地でのタクシードライバー不足への対処を目的としたものだ。ここで言う「移動困難者」とは、地方や郊外において公共交通機関を利用するのが困難な人のことである。高齢化に伴う免許返納や人口減少による電車やバスの廃線・減便などによるものだ。 そうした地域ではタクシーも少なく、地域の足の確保が急務となっている。その中で自家用車を活用したライドシェア構想が浮上した。 道路運送法第78条第3号は「公共の福祉を確保するためやむを得ない場合」に限り、国土交通相の許可を受けて地域や期間を限定して、有償での自家用車による輸送を可能としている。「日本版ライドシェア」の議論では、実は地方での「交通空白地」への対処が先行して進められ、昨年12月にこの「やむを得ない場合」という条件が緩和された。それにより、石川県の加賀市や小松市などいくつかの自治体が新しい公共交通として「自治体ライドシェア」を導入し始めている。 この場合、自治体などが実施主体となり、業者に運行管理などの業務を委託。配車アプリを使って予約し、自治体ライドシェアの運転手と乗客がマッチングして乗車に至る。ただ、システムの利用料やドライバーなどとの契約といった事務負担がある程度かかってくる。