【尹大統領の指示を無視?】非常厳戒宣布で混乱、世論に萎縮する韓国軍、これでは北朝鮮と戦えない
韓国の未来は韓国人が決めることなので、われわれ日本人は傍観し、その結果を受け入れるしかないが、戒厳から弾劾に続く一連の過程で、そう呑気に構えられない状況が散見された。 それが、韓国軍の混乱だ。北朝鮮と対峙する韓国軍の混乱は、すなわち日本の安全保障に直結する。そこで本項では、戒厳に際しての韓国軍の動きから、政治と軍隊の関係、日本の安全保障に与える影響について考察していく。
軍が大統領の指示に従わず
非常戒厳にあたって戒厳軍(韓国軍)は、国会と中央選挙管理委員会などに出動した。国会に投入された部隊は、陸軍特殊戦司令部隷下の第707特殊任務団、第1空輸特殊戦旅団、首都防衛司令部隷下の軍事警察任務隊など約280人だ。 中央選管と同研修所、世論調査審議委員会にも297人が投入された。中央選管に投入された部隊の詳細は明らかではないが、北朝鮮の情報収集を担当する国軍情報司令部の要員10人ほども含まれたようだ。 また、武装した実力部隊とは別に北朝鮮スパイの捜査などを行う国軍防諜司令部の要員も投入されたと報じられている。 尹大統領が12日の談話で、「死傷者が出ないように安全と事故防止に万全を期すよう、兵士ではなく下士官以上の精鋭だけを移動した」と述べたように、投入された第707特殊任務団は米軍特殊部隊のTier1(デルタフォース、DEVGRU)に相当する精鋭部隊だ。斬首作戦が発動されると、北朝鮮に侵入して金正恩氏を暗殺する任務が与えられていると指摘されている。 では、そんな精鋭部隊は、最高指揮官である大統領の指示(実際の命令は戒厳司令官(陸軍参謀総長)が発出)を全うできたのであろうか? その答えは否だ。 テレビで映像が流れた国会に限って話を進めよう。国会に投入された戒厳軍の任務は、(1)国会の封鎖、(2)野党議員の拘束――の2つだったが、いずれも失敗している。
Tier1部隊を上回る武力を持つ敵に屈したのではなく、非武装の民間人である国会議員と政党・国会関係者の激しい抗議に屈した。議員らから戒厳解除後の責任追及を突きつけられ、右往左往する姿が全世界に流された。 この背景には、特殊戦司令官による「絶対に兵士に実弾を持たせるな」「国民の安全が最優先で絶対に被害がおきないことを作戦の重点とする」との指示があったことが明かされた。つまり、司令官は最高刑が「死刑」の抗命罪となる危険を冒してまで、議員ら民間人との衝突を回避したのだ。 筆者は朝日新聞のインタビューに対して、「韓国軍が権力者の軍隊から国民の軍隊に変わったことを印象付けた」と答えたが、上位下達で命令を完遂するという軍隊の本旨に立てば、極めて重大な問題を露呈させたと言わざるを得ない。