2020年の旅行業の倒産件数はコロナ禍でも過去20年間で2番目の低水準
2020年(1-12月)「旅行業の倒産動向」調査
2020年(1-12月)の旅行業の倒産は26件(前年比4.0%増)で、2017年以来、3年ぶりに前年を上回った。ただ、過去20年間では最少の2019年(25件)を1件上回るにとどまった。新型コロナウイルス感染拡大が原因の倒産は7件発生し、旅行業全体の約3割(構成比26.9%)を占めた。 2020年の新型コロナ感染拡大は、海外との入出国規制、緊急事態宣言発令による外出自粛などで、国内外の人の移動を大幅に制限し、観光業界に大打撃を与えた。このため、政府や自治体、金融機関による制度融資や返済猶予などの資金繰り支援策のほか、持続化給付金や雇用調整助成金など支援策が広がり、倒産を抑制した。さらに、政府は観光業界の支援策として「Go To トラベル」キャンペーンを7月に開始、コロナ禍で苦境に直面した旅行業界に追い風となった。 だが、11月に新型コロナ感染拡大の第三波が襲来し、キャンペーンは停止に追い込まれた。キャンペーンの実施期間が短く、対象が国内旅行に限られたこともあり、大手旅行会社も軒並み赤字決算を発表、早期・希望退職の実施を打ち出した企業も現れた。 2020年は旅行業界全体が空前の危機に見舞われたが、倒産件数は過去20年間で2番目の低水準に抑えられた。しかし、東京商工リサーチがまとめた「2020年1-10月の休廃業・解散動向調査」では、2020年1-10月に休廃業・解散に至った旅行業者は前年同期の1.4倍に増加している。支援策としての借入金が、業績回復の遅れから過剰債務に陥り債務超過となる前に、事業継続を断念する企業が増えているとみられる。2021年も1月7日に首都圏の1都3県に緊急事態宣言が発令され、大阪・京都・兵庫も政府に要請した。コロナ禍の収束が見えず、倒産回避策だけでなく転業や廃業への支援も必要になっている。 ◇件数は過去20年間で2番目の低水準、一方で負債は20年間で最大 2020年(1-12月)の「旅行業」倒産は26件(前年比4.0%増)で、3年ぶりに前年を上回った。しかし、過去20年間では2019年(25件)に次いで、2番目に少ない低水準となった。 負債総額は299億7200万円(前年比2009.2%増)で、件数同様、3年ぶりに前年を上回った。(株)てるみくらぶ(東京、負債151億1300万円)の倒産が発生した2017年(215億7300万円)以来、3年ぶりに200億円を超え、過去20年間で最大だった。6月に民事再生法の適用を申請した(株)ホワイト・ベアーファミリー(大阪、6月、負債278億円)が、旅行業としては平成以降の倒産で最大の負債額で全体を押し上げた。