日本陸上界が抱える報奨金の大幅減額問題~選手の活躍と反比例するボーナス
陸上のトラックシーズンが本格化し、花形種目と言える男子100メートルをはじめ、楽しみな季節になってきた。今季のメインイベントは7月に米オレゴン州ユージンで開催される世界選手権。9月に予定されていた杭州アジア大会(中国)が延期になった分、余計に注目が集まりそうだが、大会を前にして残念な知らせが舞い込んだ。日本陸連が世界選手権の成績優秀者に与える報奨金が大幅に減ったのだ。長引く新型コロナウイルス禍の影響を受けた形で競技団体の苦悩が垣間見えるが、選手のボーナスカットは安直な印象も与える。若手には2024年パリ五輪を見据えて有望株が出てきており、報奨金の減額を意に介さないような活躍ぶりが待望される。
■けちくさく17年前に逆戻り
日本陸連の発表によると、今年の世界選手権での報奨金は1位300万円、2位200万円、3位100万円、4位80万円などとなっている。前回の2019年ドーハ大会は1位に1千万円、2位が500万円、3位に400万円、4位で150万円だった。3年前には男子競歩の50キロで鈴木雄介(富士通)、20キロで山西利和(愛知製鋼)の2人が優勝し、最高額のボーナスの対象となった。比較してみると、今回の金メダリストより3年前の銅メダリストの方が高額となっている。 今年と同じレベルの額を探っていくと、2005年ヘルシンキ大会までさかのぼらなければならない。2007年大阪大会から1位に与えられる額が400万円に増え、2015年北京大会からは優勝者には1千万円の設定。2017年ロンドン大会とドーハ大会は同水準だった。つまり、17年前に逆戻りしたことになる。 2020年に本格化した新型コロナ禍。競技会やイベントの中止が相次ぐなど、スポーツ団体に与えた打撃は大きく、日本陸連も例外ではない。例えば、2020年4月1日から翌年3月31日までの決算報告書では、正味財産合計の項は前年度の約30億8千万円から約29億5千万円と約1億3千万円のマイナスとなった。 今年の4月1日から来年3月31日までの事業計画にも、危機感が表れている。「長く続くコロナ禍で本連盟の経営基盤は揺らぎ、一部の事業においては活動規模の縮小もしくは機能を停止させている状況にあり、経費削減に努めるとともに、収益構造を再構築する」とうたっている。とはいえ、報奨金の大幅カットに手を付けてしまうことは選手のモチベーションへの影響を拭えず、陸上界の外から見るとけちくさくも映る。