「釜石の日常」カメラに収め68年 復興2度見つめた写真愛好家、故郷に別れ
仮設住宅での暮らしも5年が過ぎた。徐々に周囲では空き部屋が増えてきた。 小川さんは80年以上住み続けた市中心部の土地を売却。「車で数時間」の場所にある老人ホームに入所することも決めた。おのずと釜石を離れることになる。引越しは9月上旬の某日。「非常に寂しい。だからこそ誰にも言わないで、こっそりと、朝早くか夜に行こうと思っている」 「写真もそろそろやめよう、と思っている」と小川さん。しかし、「カメラを構えた写真を撮りたい」と記者が申し出ると、表情は一変。 「じゃあいつもの格好で」と帽子とジャージをさっと身に着けると、仮設住宅の外へ。「こうかな」と自らポーズをとってみせる姿は、とても生き生きとしていた。
撮影:山本宏樹/deltaphoto