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契約を増やしている「孤独死保険」 現代社会の難題を浮き彫りに

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産経新聞

 無縁社会の象徴「孤独死」。東京都監察医務院によると、平成30年に23区内で自宅で「異状死」した単身者は5513人と、2年間で2割も増加。世情を反映し、身寄りのない入居者が自室で亡くなった際の賃貸住宅オーナーの負担をカバーする「孤独死保険」が契約を増やしている。特殊清掃や遺品整理などの「原状回復」、供養・火葬の手配、家賃収入が途絶える「営業損失」までの一連の負担を補償。孤独死は高齢者だけの問題ではなく、自殺に起因するものも少なくない。自粛生活による発見の遅れなど、コロナ禍によるリスクの高まりも気になる。(重松明子) 【写真】孤独死の現場をミニチュアで再現  日本少額短期保険(略称・少短)協会が昨年まとめた「孤独死現状レポート」によると、孤独死事故3392人のうち男性は83%と圧倒的に多く、59歳以下のいわゆる現役世代が42%を占めている。大半は病死だが、自殺も11%あった。  「孤独死は生活環境の変化と所得の減少に起因しているように感じます。倒産、リストラ、解雇、熟年離婚…。お金と家族をなくし、一人にされると男は弱いんですかね」。同協会孤独死対策委員会の安藤克行委員長(53)が語った。  安藤さんが社長を務める少短保険会社「アイアル」(東京都中央区)では平成23年8月、孤独死保険「無縁社会のお守り」を初めて商品化した。リーマン・ショック後の不況を背景にした夜逃げの増加に頭を抱えた賃貸住宅業者からの相談を受けて実態調査。「故意による夜逃げの補償はできないが、孤独死の補償は今後ニーズが高まる」と判断したという。  当初は家賃に比例して保険料も高くなる設定だったが、現実は逆で、低家賃物件ほど孤独死発生率が高かったため、一律料金に改定。さらにこの夏、加入戸室数に応じた保険料区分(1戸あたり月額240~420円)に改定する。  原状回復費用の補償は上限100万円。家賃補償は最長12カ月・最大200万円。現在2万9413戸の契約者は、高齢者や生活保護受給者の入居にリスクを感じている、小規模アパートの大家さんたちだ。年間50~60件の補償を行っており、「事故件数」は年々増加している。  少短から始まった孤独死保険だが、ここ数年で大手損害保険各社も参入している。損保ジャパンは、2年前に火災総合保険の特約として、孤独死保険の販売を始めた。  契約者の井上喜禎さん(62)に取材を申し込むと、日当たりのよい2階建てアパートに案内され、「ここで孤独死が起きました」  東京都との県境、埼玉県草加市内の閑静な住宅街。「新聞が溜まり始めて不審に思い、カギを開けたら亡くなっていた。70代の男性で、心筋梗塞でした」。保険料は物件により変動するが、このアパートは12戸室で1棟月額1310円。井上さんは、所有する8棟すべてに孤独死保険をかけた。  入居者の7割が65歳以上。多くが単身者だ。「お嫁さんに遠慮してか、子供が近くにいるのに1人で暮らしている年寄りも珍しくない」と、ライフスタイルの変化によるリスクも指摘。「保険料は大家として、自己防衛の安心料だと思っています」  損保ジャパン新宿支社の舩越剛支社長(52)は、前任地の熊本で熊本地震(平成28年)を経験。その2年後、熊本県や住宅関連法人らと連携して「保証人不在被災者の民間賃貸住宅入居に関する連携協定」に参画した。「単身者の仮設住宅から民間賃貸への転居を円滑化するために、孤独死保険を活用。被災者のセーフティーネットに役立てた、先駆け的な取り組みでした」と舩越さん。  民間賃貸住宅への入居を拒まれがちな単身高齢者の住居を安定的に確保する支援策として、新宿区は5月、孤独死保険料の助成制度をスタート。都市計画部住宅課の担当者は「問い合わせが多数寄せられ、反響は大きい」と話す。  昔のような大家族では起こりえなかった孤独死。発見までの時間がかかるほど、故人の尊厳は失われ、後始末の費用は膨大となってゆく。他者とつながり、無縁から有縁(うえん)へ…。保険商品が現代社会の難題を浮き彫りにしている。

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