冬の家飲みに最高の「ホットビール」、向いているのはどんなビールか
巣ごもり需要の拡大に伴い、糖質オフビールやノンアルコールビールの売り上げが好調だが、一方では家庭用ビールサーバーで本格的な家飲みをする人も増えている。消費者のビールに対する意識が多様化していく中、一風変わった飲み方に挑戦したいという方にお勧めなのが、温めたビールにスパイスなどを加えて楽しむ「ホットビール」。ビアライターの富江弘幸氏に、オススメの味わい方を教えてもらった。(清談社 山田剛志) ● ほとんどのビールは 温めるとおいしくない ドイツやベルギーではポピュラーな飲み物であるホットビール。特にクリスマスシーズンにはホットワインと共に広く飲まれ、冬の風物詩として親しまれている。また、寒さの厳しい地域では風邪予防として飲用する人も多いという。 温め方に工夫はいらない。ビールを耐熱グラスやマグカップに注ぎ、あとは電子レンジでチンするだけ。100mlを目安とすると、500Wの電子レンジで1分ほど温めれば、最適な飲用温度とされる50℃~60℃に仕上がる。 加熱することで炭酸が適度に抜け、口あたりはマイルドに。爽快な喉ごしと苦味を味わう一般的なビールとは異なり、お好みでシナモンやハチミツ、砂糖などを加えて、独特の甘さを楽しむのがポイントだ。 手軽に試すことができるホットビールだが、富江氏いわく、ただ温めれば良いわけではなく、加熱して飲むのに適したビールの種類を知ることが大切だという。
「果物を副原料に使った『フルーツビール』や『ホワイトビール』、またはローストした大麦を用いた『スタウト』の3種類がホットビールに向いています。いずれもテイストは異なりますが、味や香りが濃いのが特徴です。一方で『一番搾り』(キリンビール)や『黒ラベル』(サッポロビール)など、大手各社が販売しているビールのほとんどは、加熱すると苦味が強調されるため、温めて飲むには向いていません。口あたりも水っぽくなり、酸味が増すこともあるため、バランスの悪い味になってしまうんです」 富江氏いわく、「第3のビール」と称されるアルコール飲料や「発泡酒」も、基本的には上記の大手ビールのような味わいに近いため、ホットビールには向いていないという。ただし、発泡酒でもフルーツ風味のものは温めて飲むのに適しており、ジャンルの違いよりもテイストの違いがポイントのようだ。 ● ホットビールは スイーツとの相性が抜群 数あるビールの中でも、温めて飲むのに適しているという「フルーツビール」「スタウト」「ホワイトビール」。それぞれの特徴とお勧めの飲み方について、富江氏はこう語る。 「まずフルーツビールですが、温めることで甘さや香りがさらに引き立ちます。ワッフルやタルトなどの焼き菓子に合うので、食後のデザートのおともにして飲むのがお勧めです。また、スタウトは香ばしい風味が特徴の黒ビールですが、温めることでロースト感が強まり、チョコレートにとても合います。少し変わったアレンジだと、バニラアイスを乗せてホットビアフロートにするのもお勧め。苦さと甘さが相まって絶妙な味わいになりますよ」 ビールにデザートとは何とも意外な組み合わせだが、ホットビールの特徴はなんといってもマイルドなことで、そのため、唐揚げやソーセージといった脂っこい料理よりもスイーツとの相性が良いのだ。 これらホットビールに向いている3種類のビールのうち、“最初の1杯”に最適なのがホワイトビールだ。フルーツビールは取り扱っているコンビニやスーパーが少なく、スタウトは温めることでコーヒーに近いテイストになるため、苦手とする人も多いかもしれないためだ。 「ホワイトビールの中でも、ベルジャンホワイトと呼ばれるベルギー発祥のビアスタイルは、副原料としてオレンジを用いているため温めてもおいしく、クセのない味わいで飲みやすい。『水曜日のネコ』(ヤッホーブルーイング)というベルシャンホワイトの発泡酒は、ローソンやイオン、東急ストアなどでも販売されているため、比較的手に入れやすいですよ」 「ビールの飲み方に正解はない。何がおいしいと思うかは人それぞれなので、いろいろアレンジしてみて、好みの味わいを見つけてほしい」と語る富江氏。現状、日本ではビールを温めて飲む人は少ないが、家飲みをより充実させるための手段として、今後ホットビールが注目される機会は増えていくだろう。まだまだ寒いこの季節、一手間かけたポカポカのビールで、身も心も温めてみてはいかがだろうか。
山田剛志