秋吉久美子が下重暁子に語る、母への思い「仲良しだったけど、理想の娘ではなかった。大学受験で目標が持てず、女優の道へ」
◆「折り合って」芸能界に 下重 そうでしたか。受験に再チャレンジしようとは思わなかった? 秋吉 高校卒業後、4月から予備校には通ったんですよ。だけど、どうも居心地が悪くって。大学に進んでからの具体的な目標がなかったことが大きかったと思います。 下重 入学後に目標を見つけるという発想はなかったのね。 秋吉 ええ。目標がないから受験勉強がまったく楽しくなかったの。身内にトラブルがあって弁護士さんに救われたとか、病身をずっとドクターに支えてもらったとかいう経験があったなら、熱意をもてたのかもしれないけれど。 下重 それで芸能界へ。 秋吉 はい。ひょっとしたら女優という道もあるのかな……くらいの意識で「折り合って」芸能界に入りました。そのうち、何もわからず泳いでいました。
◆まったく違う道を歩んだ可能性も 下重 芸能界とは相当厳しい世界だと思いますよ。あなたとお話ししていて、より理解が深まりました。そんな業界で、秋吉さんは秋吉さんにしかできない仕事をしている。 秋吉 「アニマルプラネット」のドキュメンタリーなんかを観ていると、ジープに乗った動物学者が野生動物を追いかけている姿が映るでしょう? キラキラと目を輝かせて。そういう姿を高校生の時にみていたら、今頃まったく違う道を歩んでいたかもしれないなあ、なんて思ってしまうの。 ※本稿は、『母を葬る』(新潮社)の一部を再編集したものです。
秋吉久美子,下重暁子