「記者にも良心はあるんだな」「話が違うよ、だまし討ちだから」東出昌大が週刊誌記者と築く奇妙な関係
「僕、SNSもやってないので…炎上って、知らないと何でもないんですね」
無論、ジョークである。何も隠し立てするような悪いことをしているわけでもなく、かといって真正面から世間をけん制するのも物騒だし、粋ではない。となれば、そんなノリで行くしかない気持ちは理解できたし、私はそう言ってしまう東出の深いところをより知りたいと思った。 ただ、世間は攻撃に使いやすい言葉やノリほど額面通りに受け止める。裏返してみるとか、光に透かしてみることはしない。 結果は予想通りだった。東出の「荒れろ、荒れろ」という発言は格好の獲物として切り取られ、火に油を注ぐ結果となった。 東出もそれくらいのことがわからないはずはない。つまり、あれは東出なりの世の中への異議申し立てであり、反抗なのだ。東出にあのときの心境を聞くと、鼻歌でも出てきそうな軽い調子で答える。 「僕、SNSもやってないので、炎上したのを知らなかったんですよ。炎上って、知らないと何でもないんですね。何も降りかかってこない。情報を拾いに行けば傷つく言葉はいくらでもあるんでしょうけど、それをしなければ、炎上っちゅうのは炎上じゃないんだなって気づきましたね」 知らないはずがない。多忙な中、東出はつい前日の自分にまつわる些細なネットニュースもチェックしていたのだから。にもかかわらず「知らなかった」と吐いたのは東出の意地だと思った。 デッドボールを受けた打者が交代させられたくないがために、痛みを隠し、ことさら元気な様子で一塁に駆けていくことがある。東出の不自然な明るさは、それに似ていた。 #3「浮気は魂の殺人であることを痛感した」へつづく 取材・文/中村計 撮影/石垣星児
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