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4組のインディーズ・アイコンが登場!──まつろわぬ者たち【行松陽介編】

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GQ JAPAN

独立独歩でわが道を行くインディーズの表現者たちは、いま、何を語る? ラッパーからDJ、ドラァグクイーン、シンガーソングライターまで、世界の自由なアイコンたちにせまる。──新型コロナウイルスの影響により、独立系アーティストたちが打撃を受けている。DJの行松陽介がその状況に吠える。「あきらめたら終わりだ」と。 【写真を見る】インディーズのアイコンたちを見逃すな!

YOUSUKE YUKIMATSU

行松陽介/ DJ 2020年3月26日、日本のテクノ・シーンの第一人者であるDJ NOBUは国会へ出向き、クラブやライブハウスが置かれている窮状を菅義偉官房長官に訴えた。DJ NOBUとも親交が深いDJの行松陽介への取材は、その2日後に行った。行松は、DJの現状をこう語る。 「昨日のパーティはストリーミング配信になり、今夜のパーティは延期になりました。今年は国内のフェスにもブッキングしてもらって喜んでいたところにこの騒ぎで、この先どうなるかわからないという不安のなかにいます。僕たちだけでなく、クラブやライブハウスを閉めると、そこでアルバイトをしている人たちも家賃を払えなくなるとか、そういう問題はすぐに出てくると思います」 クラブやライブハウスに営業の自粛を要請しつつ補償はしないという、取材日時点での政府の対応に、行松は強く憤る。 「禁止にすると補償をしないといけないから、自粛要請という曖昧な言葉を使っているんだと思います。いまの日本の政府は、文化を大事にしていないし冷たいと感じます。いまは出歩くのがまずいというのが正論だというのはわかります。でもこっちも死活問題なので、正論と正論の板ばさみ状態ですね」

新型コロナウイルスの問題はひとまず措き、DJとしての音楽活動について話を訊く。27歳で遅咲きのデビューを果たした行松は、2016年、ベネズエラ出身の世界的な音楽プロデューサー、アルカの大阪公演で共演して話題となった。また、独創的なビジュアル表現で中国の現代アート界を牽引するエイジアン・ドープ・ボーイズのメンバーとコラボレートするなど、活躍の場をひろげている。 「上海ではワンマンのイベントに300人も集まってくれて、うれしかったですね。オーガナイザーが『お前は中国ではすごく有名だ』と言ってくれました。去年、台湾の新しいハコでやらせてもらったときも、オーナーから『すごくいい、台湾でもスーパースターだぞ』と持ち上げられて、いやいや、と(笑)」 といった具合に、行松は国境も人種もジャンルも飛び越えて表現活動を行っている。音楽ファイルを詰めたUSBメモリさえあれば、体ひとつで自由にあちこちへ行って活動できるのだ。ここで、冒頭のクラブやライブハウスへの補償の問題に戻る。いまこそアートや娯楽が意味をもつのではないか、と行松に尋ねると、こう答えた。 「正直、何をやっても変わらないんじゃないか、という気持ちもあります。SEALDsにしろ反原発運動にしろ、あれだけ盛り上がっても法案を止められなかったじゃないですか。徒労感がすごいんですね。でも使い古された言葉かもしれないけれど、あきらめたら終わりなんで、続けていくしかないです」 この取材と前後して、「新型コロナウイルス感染拡大防止のための文化施設閉鎖に向けた助成金交付案」(#SaveOurSpace)と銘打った署名運動が立ち上がっている。発起人はDJのMars89や篠田ミルなどで、行松やDJ NOBUのほか、坂本龍一や真鍋大度なども賛同を表明している。いつもはバラバラに活動する個人が、ピンチのときにはスクラムを組む。危機を乗り越えるためには、こういう方法もあるのだ。たとえ政府が冷たくて文化を理解しないとしても、行松が言う通り、あきらめたら終わりだ。

PROFILE 1979年大阪生まれ。レコード屋を営む家庭環境に育った。小学生の頃にB’zに衝撃を受け、高校時代はバンドを組みたかったが、メンバーが集まらず断念。卒業後はフリーターをしながら理学療法士を目指したが、やはり音楽の道に進みたいと、肉体労働をしながらDJの機材を買い揃えた。影響を受けたのは坂本龍一と蓮實重彦。肉体労働を始めたきっかけも、坂本龍一が絶賛した映画『EUREKA(ユリイカ)』のワンシーンに影響されてのことだという。

文・ サトー タケシ

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