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利き腕を失っても僕は守護神 強豪校からアンプティサッカーGKに

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西日本新聞

 「川村、ストップ。ヨシは右、右!」  「引け、引けぇ」「社長、行き過ぎるな。9を見て。ナーイス!」 【動画】上野選手のプレー集、片腕や脚でゴールを守る  2019年5月、大阪市で初めて見た隻腕のゴールキーパー(GK)、枯れ気味のよく通る声が耳に残った。20歳以上も年上の選手にも気後れせず、シンプルに指示を出し続ける19歳。若さに似合わぬ「安定感」という言葉がしっくりきた。  腕や脚の切断障害者がプレーする「アンプティサッカー」では、片腕の一部を切断、もしくは先天的に欠損している選手が、残った腕を駆使してGKを務める。片腕でのキャッチングが難しい分、パンチングとの使い分けが重要になる。  上野浩太郎選手(20)=滋賀県甲良町=は、その選択が堅実だった。無理が利く場面では左腕で包み込むようにボールをつかむ。クロスや高めのシュートは拳で確実にはじく。  1対1の場面でも自分の体に当てて防いだり、相手のミスを誘ったりする光景が繰り返された。ペナルティーエリアのギリギリ前に立って相手と駆け引きするなど、ポジション取りの良さも光る。  アンプティサッカーの国内大会では、老若男女が同じピッチで戦うのが特徴だ。国内の競技人口は100人ほどで、年齢別での試合開催が難しい裏返しでもある。40代、50代も珍しくない中で、競技を始めて2度目の大会に臨んだ上野選手の安定感は群を抜いていた。右腕を失う直前まで、高校サッカーの強豪、綾羽(滋賀県草津市)でもまれたGKだったからだ。

サッカーのGK経験者は初めて

 彼以前のアンプティのGKにもサッカーの経験者は珍しくなかった。先天的に腕の一部を欠きながら高校サッカーの名門・鹿児島実業でプレーしたり、腕を切断する前に清水商業(静岡県)でフォワード(FW)として全国制覇を経験したりした選手もいる。ただ、通常のサッカーでみっちりGKを経験した上で、アンプティを始めたのは上野選手が初めてといえる。  国内での歴史が10年ほどで、GKも含めた各ポジションのプレースタイルが確立途上の競技にとって、専門性を持った彼は待望の存在だ。なぜ競技の門をたたいたのか。安定感はどこから生まれたのか。  上野選手は小学3年でサッカーを始めた時からGKだった。体験練習に行った少年団にはGKが不在。頼まれるままゴールを守った最初の試合で、勝利に貢献すること、称賛されることの喜びを体感した。中学ではフィールドプレーヤーも経験したが、GKへの思い入れは深かった。

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