今から日本に「天才起業家」ひしめく時代が来る
レオス・キャピタルワークス会長兼社長で、成長企業株を的確に選択した高利回りの「ひふみ投信」の運用責任者として個人投資家の圧倒的な支持を集める投資家の藤野英人氏。 8000人の企業経営者に会ってきた藤野氏は江副浩正を「起業のボス」と呼ぶ。そして江副浩正のDNAを受け継ぎ「軽々と世界の壁を越えるベンチャー企業界の‶藤井聡太”や‶大谷翔平”がまもなく出現する」と予言する。 どういうことか、『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』を上梓した大西康之氏が詳しく話を聞いた。 この記事の写真を見る
■江副浩正は「起業のボス」である ――藤野さん自身も野村投資顧問、ゴールドマン・サックス・アセットマネジメントなどを経て2003年に起業し、その後は投資家として活躍されています。起業家と投資家の2つの視点を持つ藤野さんから見て、江副浩正とはどんな人物ですか。 リクルートをつくったという意味では「起業の天才」ですが、私の中では「起業のボス」というイメージが強いですね。 日本のベンチャー企業で、彼が育てた人、あるいはリクルートを巣立った人がどれだけ活躍しているかを見ればわかる。起業家の数で見れば元リク(リクルート出身者)が圧倒的でしょう。
元リクの会社は人材系、IT系、不動産系、そしてサービス業全般と多岐にわたりますが、彼らが経営する会社の株価や業績のパフォーマンスは突出しているんです。そして「リクルート事件」を経験しているからかもしれませんが、不祥事が少ない。 起業家を最も多く輩出した会社というだけではありません。楽天、ソフトバンク、ヤフーの中でも多くの元リクが活躍している。 ――江副さんがリクルートの経営に関わっていたのは、今から30年以上前の1989年までです。多くの人が江副さん自らによって手取り足取り育ててもらったわけではありません。
人材を育んでいるのは、江副さんが残した空気。リクルートの文化ですね。日本の多くの大企業がもつ旧態依然としてシステムとは無縁で、東大卒のエリートと地方の高卒男子や女子をフラットに起用して競わせるとか、垂れ幕文化とか、お祭り的な雰囲気とか、圧倒的な1番になるために挑戦する風土とか。起業家に必要な気質が身につく環境があるんです。 ■やっと「ベンチャーが大きく育つ環境」が整った ――元リクがそれだけ目立つということは、裏を返せば他の場所で起業家が育っていないということになります。実際、日本で生まれるベンチャーの数はアメリカ、中国などに比べると少ないし、世界に通用するベンチャーもあまり生まれていません。