「SDGsは全く難しいことじゃない」岸博幸が教える 自分と相手に寄り添うSDGs
最近、ネットやテレビでよく耳にするSDGs。2015年9月に行われた国連サミットで採択された『国連加盟193か国が2030年までに達成するために掲げた持続可能な開発目標』のことだが、そもそもSDGsってなに?と思っている人も多いのではないだろうか。 「SDGsはただのボランティアではなくて、個人はもちろん企業にとってもビジネスチャンスに繋がる重要な取り組みなんです」。こう語るのは、元経済産業省官僚でテレビのコメンテーターとしても活躍する、慶應義塾大学大学院教授の岸博幸さん。ひとりひとりが始められる、SDGsの具体的な取り組みについてお話を伺った。(Yahoo!ニュースVoice)
SDGsは伝統文化を救う 過去に隠された未来へのヒント
――まず最初に、岸さんはどのようなSDGsの取り組みをされているのか教えて頂けますか。 私も関わっていて、分かりやすい事例のひとつだと思うのが、福井県鯖江市で、漆という伝統文化を復活させる取り組みになります。 昔ながらの和食の器や漆器だけではなく、もっと若い人が普通にお店で欲しいと思う品物に漆を塗ることで、より漆の価値を高めることが出来るのではないか、というところからスタートしたところ、漆の世界では実は1000年以上前からSDGs的な取り組みをやっていたことに気づきました。 漆器というのは長期間使用したり、落としたりすると塗装が剥げたり欠けてきます。普通の器ならそのまま捨ててしまいますが、漆器の場合は作った人の所に持って行けば、お直しをしてくれます。これは資源を無駄遣いしないというSDGsの取り組みそのものなのです。 何か新しいことをしなくては、と意気込まなくても、この漆のような伝統文化を現代版にアップデートするだけで十分SDGs的であり、私はこの漆のSDGs的アプローチを他の産業にも広げていこうと考えています。
これからは良い物より付加価値 SDGsで変わる私たちの価値観
――最近は、販売されている商品もSDGsを意識した物が多くなっている気がします。 消費者の価値観の変化に伴って、企業は当然これからSDGsを意識した製品をいっぱい出します。例えば、普通にTシャツを売るだけでは消費者に訴えるポイントが弱い。これからの時代、売る側は生き残るために、「実はこのTシャツで使っている原料は、地球環境のためになる原料で作っています」といった説明をして、その商品のストーリー性を消費者に訴えかけることが大事です。これは他の企業の同じような商品と差別化をして、自社の商品の価値を高めることに繋がります。今は良い製品・良いサービスは当たり前で、それに加えて新しい付加価値を伝えることが重要です。 日本の企業の99%は中小企業であり、経済発展という意味で中小企業こそSDGsを頑張ってほしいなと思っていますが、「そんな大企業みたいにお金をかけられないよ」という声は当然あります。しかし例えば社内で働く人に注目して、「ジェンダー平等で女性をどんどん登用しています」とか、「こういう形で社員の能力を伸ばしています」とか、「社員みんながハッピーに暮らして働ける会社だから、こういうものが作れています」というのは充分にSDGsの取り組みとして説明ができることなのです。 実はSDGsはいろいろな切り口から取り組むことができます。だから、中小企業でお金もないから無理だと諦めないで、そういうことがしっかり見えるようにするだけでも、企業の発展に繋げることができるのです。