ドンキが傘下のユニーを「ドンキらしくない方法」でテコ入れする理由
ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は、傘下に入れたユニーを「ドンキらしくない方法」で、テコ入れを始めている。ドンキは現在、ユニーの総合スーパー(GMS)既存店をドンキとユニーの「ダブルネーム型」でテコ入れを図る。その一方、残るユニー既存店はドンキのビジネスモデルとは異なる方法で、活性化を目指している。そこにはドンキの「遠大な構想」が隠されているかもしれない。(流通ジャーナリスト 森山真二) ● 改装オープンした 「ピアゴプラス妙興寺店」 ユニーの本拠、愛知県の大型食品スーパー(SM)業態、「ピアゴプラス妙興寺店」。昨年6月にユニーの「ピアゴ妙興寺」から改装オープンした、ドンキ流の「個店経営」を取り入れた店舗だ。 ユニーがPPIHの傘下に入って以降、「ピアゴ」というユニーの旧来からのブランドに「プラス」を付加し、新しいイメージの看板に付け替えた。 「プラス」というなんとなく控え目なイメージながら、ドンキがバックについてテコ入れするから期待が持てる。店は圧縮陳列がいたるところで展開されドンキらしい、あのジャングルのような売り場がみられるのかと思っていた。
● ドンキらしくない 売り場 しかし、肩透かしを食らった。そこにあったのは、まさに「ドンキらしくない売り場」だったからだ。ドンキが得意の派手なPOPもなければ、圧縮陳連はどこにいったのかというくらい、おとなしめの売り場。いわば、いたって正統派の大型SMの売り場なのだ。 しかし、従来の大型SMと決定的に違うところは、品ぞろえが相当絞り込まれている点だ。 売り場構成は1階が食品、2階が衣料品 、そして3階が「デイリードラッグ」という医薬品や化粧品など美容と健康商品のための売り場と、以前の売り場に比べカテゴリーを大胆に構成し直している。 しかし、どの売り場を見ても「ドンキらしさ」を感じられないのだ。 実はピアゴプラス妙興寺店は「見えないところ」が大きく変わっている。従来型のGMS企業が展開してきた「本部集中仕入れ」というやり方を否定した、ユニー本体がテコ入れした1号店だ。 個店経営という、店舗のスタッフが商品の仕入れから競合店の価格を調査しての値付け、さらに陳列から販売まで店舗のスタッフ自らが考えて実行する方式に切り替えたのである。 ドンキの基本原則である個店での仕入れ、販売体制といえる。 ドンキ流の個店運営を持ち込んだのだから、当然、売り場もドンキ流が採用されていると考えそうなものだが、妙興寺店はその片鱗すらない。 ● 強烈な成功体験 その殻をどう打ち破るのか 周辺を見ると、その謎が解ける。わずか2~3キロメートルの距離の場所に「MEGAドン・キホーテUNY一宮大和店」というユニーを業態転換しダブルネームを冠した店があるのだ。 メガドンキ一宮大和店は妙興寺店とまともに競合。つまり、相互に干渉しあうような場所にドンキのような店を2店作っても競合するからだ。同じ商圏内でユニーとドンキを成立させるPPIHの周到な計算だろう。 「小売業の個店は地域ナンバーワンではなくてはならぬ」というのがドンキ創業会長兼最高顧問の安田隆夫氏の持論。つまり同じような店を同一商圏に2店作ったらカニバリは避けらない。