業績を上方修正したホンダだが…より鮮明になった“中国頼み“の怖さ
EV加速へ背水の陣
2021年3月期連結業績予想(国際会計基準)で、営業利益を8月公表比2200億円増の4200億円(前年同期比33.7%減)に上方修正したホンダ。中国の4輪車販売が、新型コロナウイルス感染拡大の影響から想定を上回るペースで回復している。 珍しく決算会見に登場したホンダ社長、とても残念だった発言内容とは? 売上高は同2500億円増の13兆500億円(同12.6%減)を見込む。4輪車の世界販売は同10万台増の460万台(同4.0%減)と上振れを計画。地域別では中国を含むアジアを同8万5000台増の220万5000台(同13.0%増)、日本を同1万台増の62万台(同7.7%減)に引き上げた。 倉石誠司副社長は6日のオンライン会見で今後の4輪販売の見通しについて基本は中国を中心に伸ばすとし、「中国では暦年で新車効果なども加えて前年を越える販売を目指したい」と話す。ホンダは4輪事業で低収益にあえぎ、構造改革を進めている。20年3月期の同事業の営業利益は1533億円。売上高が5分の1の2輪事業の営業利益(2856億円)より小さい。売上高営業利益率は1・5%。17年3月期の約5%から下降傾向が続く。 このため日欧の工場閉鎖などで22年までに生産能力を19年比約1割削減する。中国を除くグローバルの工場稼働率を22年に100%に高め、生産コストを25年までに18年比で1割引き下げる。25年までに「シビック」などグローバルモデルの派生数を19年比3分の1にする。部品共有を高める設計手法も導入して開発工数を3割減らすなど、痛みを伴う改革を断行する。 そんな中、中国の自動車販売は新型コロナウイルスの影響による落ち込みから回復が続いている。日系自動車メーカー6社合計の9月の中国新車販売は前年同月比16%増の約52万台。政府の販売支援が需要を押し上げ、5カ月連続で前年実績を上回った。中でもトヨタ自動車は2月のコロナ危機を含めた1―9月期の販売が前年同期比6・9%増と前年を上回り、回復需要を確実に取り込んでいる。 9月の販売はトヨタとホンダは9月単月として過去最高を更新した。中国生産も9月はトヨタがセダン「カローラ」などが好調で同48・5%増の16万4563台。ホンダはセダン「シビック」などが増え、同33・9%増の18万9060台。市場全体では中国汽車工業協会によると、9月の新車販売は同12・8%増の約257万台と6カ月連続で前年実績を上回った。そのうち全体の約8割を占める乗用車は同8・0%増の約209万台、商用車は同40・3%増の約48万台だった。 一方、中国政府は2035年をめどに新車販売のすべてを環境対応車にする方針を示した。50%を電気自動車(EV)などの新エネルギー車とし、残りの50%をハイブリッド車(HV)にする。ガソリンエンジン車は市場で販売できなくなる可能性が高いと見られる。HVに強みを持つ日系各社にとって、新エネ車開発などとのバランスを取る難しいかじ取りが求められる。調査会社のマークラインズによると、9月のEVなど新エネルギー車の販売は同67・6%増の約14万台と、9月単月で過去最高を記録した。うちEVは同71・5%増の約11万台だった。
ホンダが世界最高峰の自動車レース「フォーミュラ・ワン(F1)」から2021年シーズンを最後に撤退を決めた理由もそこにある。「カーボンフリーへの対応が重要なチャレンジになる。そこに技術者のリソースを傾けるべきだと判断した」。ホンダの八郷隆弘社長はF1撤退の狙いをこう強調する。EVなど二酸化炭素(CO2)排出削減に貢献する技術の開発に経営資源を振り向け4輪事業の改革を加速し、自動車業界が直面する100年に1度の大変革と、収益源の中国市場に対応する。