原発事故で全町避難続く双葉町 重くのしかかる10年 “新たなまちづくり”で帰還者の希望・期待に対応
全町避難続く双葉町 2022年の居住開始目指すも…
福島県内の自治体で唯一、全町避難が続く双葉町。2022年の居住開始に向けて、新たなまちづくりを進めているが、10年という歳月が重くのしかかっている。 【画像】「住む拠点」として整備するJR双葉駅周辺 県内で唯一、全町避難が続く双葉町。2020年3月に一部の避難指示が解除されたが、住民が住める環境が整うのは、2022年の春を待たなければならない。 東京電力・福島第一原発が立地する双葉町を襲った、震災と原発事故。町の全域に、避難指示が出された。 避難指示の解除に向けて除染などを行うエリアは、双葉郡で最も遅い、2013年5月に決まった。それは、厳しい現実を突き付けるものだった。 町の中心部を含む96%が、「将来にわたって居住を制限する区域」。その名の通り、「『帰還困難』区域」に指定されたからだ。 双葉町・伊澤史朗町長(2013年5月): 一番、双葉郡8カ町村の中で双葉町の復旧復興っていうのは、難しい取り組みになるだろうと思っています」 さらに復興を難しくさせたのが…。 2014年9月 福島・佐藤雄平知事(当時): 建設の受け入れを容認する、苦渋の決断を致しました 双葉町が大熊町とともに、県外での最終処分を条件に受け入れた「中間貯蔵施設」。2021年度には、除染で出た廃棄物の搬入が完了する予定。 しかし、約束とされた2045年までに県外に搬出するための最終処分場の受け入れ先は、まだ決まっていない。 双葉町・伊澤史朗町長: 大熊も双葉も、復興して戻らなくちゃならない。これって最初から「0」のスタートじゃなくて、「マイナス」のスタートになるんですよね
帰還の遅れと難しさが故郷への思いに影響
マイナスからのスタート。帰還の遅れと難しさは、復興に欠かせない町民の「故郷」への思いに変化を起こしていた。 双葉町出身 石井美有さん(19): 自分自身の成長につながったっていうのもあって、恩返しって言ったら大げさかもしれないですけど、何か手伝えることがあればっていう 町の現状を視察するイベントに参加した石井美有さん。双葉町出身で、新型コロナウイルスの感染拡大により延期された2021年の成人式の実行委員長を務めている。 双葉町出身 石井美有さん(19): 本当にまっさらだなって。何もないなって。「0」から始めるって、こういうことなんだなって。こういうの(町のイベント)に参加する度に、おじいちゃん、おばあちゃんしかいないっていう現状は、どうにかしないといけないんだろうなっていうのはあるので。若い人に知ってもらうきっかけとかを作った方がいいんだろうなって思いました しかし、成人式の打ち合わせが行われた12月5日。石井さんは、町の担当者から、式の欠席者が半数以上になったことを告げられた。 双葉町出身 石井美有さん(19): (同級生の)顔と名前もギリギリ覚えているか覚えてないかぐらいの年齢なので、ちょうど私たちぐらいが。少なくなりそうだなっては思ってたんですけど、残念な気持ちはあります 原発事故後も双葉町の成人式は、いわき市で開催されてきたが、欠席者が半数を超えるのは初めてだった。 町の担当者: 避難先での生活もあるでしょうし、避難先でのつながりの方が、だんだん強くなっていっているんだろうなというふうに思いますね 時間がたつにつれて定着する、避難先での生活。それを裏付けているのが、復興庁や町などが実施した意向調査だ。 「戻りたい」は約1割、「戻らないと決めている」は6割を超えた。一方で、全体の約4分の1を占めたのが「まだ判断がつかない」だった。