F1分析|やっぱり……フェラーリを苦しめたデグラデーション。メルセデスの急浮上にも注目
F1スペインGPを制したのは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンだった。 フェルスタッペンは2番グリッドからスタート。ポールポジションからスタートし逃げを打つシャルル・ルクレール(フェラーリ)を追った。しかしレース序盤にターン4で挙動を乱してコースオフし、ルクレールに10秒以上の差を築かれてしまった。これで万事休す……と思われたが、27周目にルクレールにまさかのトラブル発生。メルセデスのジョージ・ラッセルを攻略するのに苦労するシーンもあったが、フェルスタッペンは3ストップ戦略を採り、逆転で勝利を掴んだ。これで今季4勝目(3連勝)ということになり、ドライバーズランキングでも首位に浮上した。 【動画】まさか! フェルスタッペンとサインツJr.を翻弄した”魔の”ターン4 さてこのスペインGPの決勝レースのペースを見てみると、もしトラブルが発生しなかったとしても、ルクレールがフェルスタッペンに勝てなかった可能性もあることが見て取れる。
■デグラデーションが大きかったフェラーリ。一方メルセデスは……
レース序盤、フェルスタッペンと一騎打ちとなったルクレール。しかしそのペースは徐々に落ちていたのが、グラフから読み取れる。フェルスタッペンがコースオフした後もルクレールのペースは下落。11周目にはこのレース最低の1分28秒976を記録した。ただその後、ルクレールはペースを持ち直し、最初のスティントを走り切った。 ただチームメイトのカルロス・サインツJr.のペースを見ると、いずれのスティントでも、比較的デグラデーションが大きい傾向が見て取れる。これは、レース前の段階でルクレールも懸念していたことだ。 対するレッドブル勢は、最終スティントのフェルスタッペンこそ大きなデグラデーションの傾向が見て取れるが、それ以外、特にペレスのレースペースは実に安定しており、デグラデーションが小さかったと考えられる。 つまりもしフェルスタッペンがコースオフせず、常にルクレールにプレッシャーをかけ続けていたのならば、ルクレールにトラブルが起きなかったとしても、逃げ切るのは難しかったかもしれない。 フェラーリがレースペースで苦しむのは、ここ数戦続いてきたこと。エミリア・ロマーニャGPでもマイアミGPでも、レース序盤は逃げたものの、次第にフェルスタッペンに接近され、逆転を許している。これを解消できなければ、今後の戦いは苦しむことになるだろう。 一方で驚きだったのは、メルセデス勢のペースだ。今季苦しんできたメルセデス勢だが、スペインGPでは復活の兆しを見せ、ラッセルが3位。チームメイトのルイス・ハミルトンは、最後にサインツJr.に抜かれ5位になったものの、オーバーヒートの懸念さえなければ4位でフィニッシュしていた可能性は高い。 ハミルトンは1周目に、ケビン・マグヌッセン(ハース)と接触し後退。サインツJr.もターン4でスピンし後退している。つまりふたりはイコールコンディションか、もしくはハミルトンの方が多くのタイムを失ったはずだ。にも関わらず、ハミルトンはサインツJr.と真っ向勝負を繰り広げたというわけだ。 これを考えれば、メルセデスは決勝レースペースでは既にフェラーリと同等のパフォーマンスを手にしている可能性がある。しかもグラフを見れば分かる通り、サインツJr.のそれに比べれば、ハミルトンとラッセルのデグラデーションは実に小さい。 予選ペースではまだまだレッドブルやフェラーリには後れを取っているメルセデス勢だが、決勝ペースでの遅れはかなり取り戻してきた。シーズンが進むにつれ、その差はさらに小さくなっていくはず。 今シーズン終盤は、三つ巴の激戦になっているかもしれない。