【来春選抜21世紀枠候補】長崎・壱岐 人口2万4000人の離島“黄金世代”が夢に近づいた
日本高野連は13日、第97回選抜高校野球大会(来年3月18日から13日間、甲子園)の21世紀枠候補9校を発表した。九州・沖縄地区からは創部48年目で初出場した今秋の九州大会でベスト8入りした壱岐(長崎)が選出された。出場2校は一般選考の30校とともに来年1月24日の選考委員会で決まる。 午後3時。授業を終えた壱岐ナインは教室で各自の勉強用タブレット端末をすぐさま開いた。21世紀枠候補発表を確認すると、エースの浦上脩吾主将(2年)は「気持ちが高ぶりました」と喜びをかみしめた。 人口約2万4000人の離島から夢舞台に一歩近づいた。創部48年目で初出場だった今秋の九州大会で8強入り。原動力となったのは中学時代から実力を発揮してきた“黄金世代”の2年生だ。浦上主将が在籍した郷ノ浦中は22年の九州中学生選抜大会で優勝。勝本中は22年の県中学総体を制して全中に出場した。引退後に島内で行われた合同練習で「壱岐から甲子園に行こう!」と話し合った。全員が島出身の部員21人が団結して夢を追いかけている。 目標は甲子園に出るだけではなく、勝つこと。現在は体力面やフィジカル面を中心に鍛え直している。県内のライバル校である波佐見で01年夏の甲子園に出場した経験がある坂本徹監督は「自分たちの代になって、もっと勝ちたいという欲が出てきた」と選手の成長を感じている。 農産物やウニやイカの魚介類など、島には豊かな自然の魅力がある。浦上主将は「海がきれいで食べ物もおいしい。自分は壱岐牛が好きです」と照れながら話した。九州大会には島民が開催地の大分まで応援に駆けつけるなど、地元からも愛されている。「地域の方々にいつもよくしていただいているので、野球の結果で恩返しがしたいです」と浦上はナインの思いを代弁した。 (杉浦 友樹) ▽壱岐島 玄界灘に浮かぶ長崎県の離島。博多から高速船で約1時間、長崎空港からは飛行機で30分の位置にある。古事記には、5番目に生まれた「伊伎島」として記され、中国の魏志倭人伝には「一支国」(いきこく)として登場する。観光スポットである奇岩「猿岩」やウニ、壱岐牛も有名で漫画「奈緒子」の舞台・波切島のモデル。主な出身者は76年夏の甲子園で海星のエースで4強入りし“サッシー旋風”を起こし、ヤクルトでもプレーした酒井圭一氏らがいる。