<ウクライナ支援の輪>熱気球大会でロシアとウクライナの選手が民泊 佐賀の住職「いたたまれない」
「たまたま、ロシアとウクライナの方と縁があった。ニュースを見ていると、いたたまれない気持ちになる」。小城市牛津町の菰田(こもだ)照雄さん(79)は、2016年に佐賀市で開かれた熱気球世界選手権で、両国の選手たちに宿を提供した。苦境に遭い祖国を逃れるウクライナの人々の状況を案じ16日、佐賀善意銀行に義援金を預託した。 菰田さんは同町の壽泉寺(じゅせんじ)の住職。大会のボランティアから宿泊先の相談があり、ロシアとウクライナの選手ら約10人を12日間ほど受け入れた。「どちらの国の選手も仲良く会場に通っていたよ」 高校の英語教師だった長女・真由美さん(47)を介してコミュニケーションを取り、食事を囲んだ。日本の仏教文化に触れてもらおうと座禅を教えたところ「翌日から本堂で座禅をしていて驚いた。体は大きいがどちらの選手も優しく素直。とても和気あいあいとしていた」と懐かしむ。 大会中、佐賀の空を彩ったバルーン。「寺の屋根の上にもどんどん飛んできたし、応援にも行ったよ」。わずか6年で、いまウクライナの空を戦闘機やミサイルが飛び交う事態となった。その落差に「信じられない気持ち。政治家たちによって侵攻が始まり、一瞬にして平和が崩されてしまった。彼らには戦う気などないはずなのに」と憤る。 数百万人に上る難民発生の報道に触れ、ウクライナ人道支援の義援金を受け付ける佐賀市の佐賀善意銀行(佐賀新聞社内)に、牛津町仏教会として10万円を預託した。会は同町の14カ寺からなり、20年以上にわたって、托鉢(たくはつ)などに寄せられた浄財を国内の被災地や地域の小中学校に寄付してきた。今年は菰田さんが呼び掛け、初めて外国への義援金に充てる了解を得た。 直接連絡を取っておらず、選手たちの現状は分からない。寺の本堂には今も彼らの写真が飾ってあり「毎日の勤行(ごんぎょう)で見るたびに、どうしているだろうかと気にかかる。この気持ちが、難民の方に少しでも手助けになれば」と、佐賀からできる支援に平和への願いを託す。(志垣直哉)