韓国・徴用工訴訟「日本企業の資産現金化」が近く決定か、元韓国大使が解説
● 外交部が大法院に対し 徴用工問題で意見書を提出 韓国の大法院(日本の最高裁判所に当たる)は2018年10月30日、元徴用工の賠償請求訴訟で三菱重工など日本企業に対し、賠償を命ずる判決を行った。さらに2019年1月9日には、原告側による日本企業の財産の差し押さえ申請が認められた。大法院では現在、資産の売却命令を不服とする日本企業の再抗告が審理中で、今年9月前後には棄却により資産現金化の決定がなされる可能性がある。 【この記事の画像を見る】 日本企業の資産現金化については、日本政府が猛反発しており、報復措置が検討されている。その結果、日韓関係は壊滅的な打撃を受けることが想定されている。 このため、韓国政府は解決策を検討するための官民協議会を設置、さらに朴振(パク・チン)外相が訪日して外相会談を行ったが、具体的な進展はなかった。 こうした状況の中、外交部は大法院に対し、「徴用工問題解決に向けた外交的努力」を説明する意見書を提出した。 これに関し中央日報は、徴用工問題の外交的解決に努力している間に、大法院の最終結論が出ることを憂慮した措置と解説している。外交部の意見書提出は、国家間の利害関係が対立する外交的事案の場合、司法的判断ではなく行政府の立場が優先して反映されるべきだという「司法自制の原則」を要請するメッセージだという。
● 官民協議会を設立したが 元徴用工側の立場に妥協の余地なし 韓国政府は資産現金化の前に望ましい解決策を見いだすべく、外交部の趙賢東(チョ・ヒョンドン)第1次官の主宰で、徴用工被害者団体、法律代理人、学界専門家、言論・経済界から12人が参加する官民協議会を設立し解決策の模索を始め、これまでに7月4日、14日の2回、会合を行った。 この会合に参加した元徴用工側のチャン・ワンイク弁護士とイム・ジェソン弁護士、民族問題研究所対外協力室のキム・ヨンファン室長は、会議と記者会見の場で、「被害者と日本の加害企業と直接交渉することが道理にかなっている」とし「政府が外交的努力をしてほしい」と述べた。また、仮に政府が検討する代位弁済方式を取る場合には、少なくとも、基金に加害者である日本企業が参加することと謝罪を行うことが不可欠であると主張した。 しかし、元徴用工側のかたくなな姿勢のため、朴振外相の訪日では具体的な成果は何もなく、現金化のタイムリミットが近づいてきた。このため外交部が取った措置が、大法院への意見書の提出であった。 外交部は7月29日、「政府は(徴用工問題に関し)韓日両国の共同利益に合う合理的な解決策を模索するため、日本と外交協議を続けていて、官民協議会などを通じて原告側をはじめとする国内各界各層の意見を聞くなど多角的な外交努力を続けている」として、大法院の民事訴訟規則(国家機関は国益関連の事項に関して大法院に意見書を提出することができるとする規則)に基づき意見書を提出した。 ● 外交部の意見書提出で 元徴用工団体が相次ぎ反発 日本製鉄・三菱重工・不二越の3社を相手取って訴訟を提起してきた被害者支援団体は、外交部が大法院に対する意見書の提出によって信頼関係を壊したとして、官民協議会から離脱すると宣言した。 この被害者支援団体は、外交部の意見書提出に「深く遺憾を表明する」とのコメントを発表。また、「官民協議会という公開的な手続きが進行しているにもかかわらず、その手続きで全く議論されなかったことはもちろん、被害者側に事前にいかなる議論や通知もなく意見書が提出された。外交部は既に提出された意見書でさえ被害者側に公開できないという立場を守っている」と非難した。