首をマフラーで絞めて性的嫌がらせ…被害申告した女性は雇い止めに 背景に「ベンチャー投資業界の問題」と代理人指摘
女性起業家の約52%、投資家らからセクハラ被害に
こうした一連の対応について、代理人の指宿昭一弁護士はジャフコ側の姿勢に問題があるのではないかと指摘する。 実はジャフコが君臨するベンチャーキャピタル業界は、セクハラに対し、”緩い”といわれている。 今年7月にアイリーニ・マネジメント・スクールが実施した調査によると、女性起業家の約52%が過去1年間にセクハラ被害を受けたと回答。セクハラの加害者として最も多くあげられたのが、投資家やベンチャーキャピタリストだった。 「ジャフコは老舗ベンチャーキャピタルであり、上記のような社会問題が明らかになった今、セクハラ行為によって労働者や投資家に対する人権侵害を引き起こさないよう防止する責任があるはずです。 にも関わらず、本件の法的責任を否定し、謝罪や賠償を拒否する姿勢には重大な問題があります。 また、相手側の弁護士も、社会的に問題になっている事件で、責任を全面的に否定するという姿勢はどうなのかと思います」と指宿弁護士は憤りを隠さない。 ベンチャーキャピタル業界の構造上の問題にも指宿弁護士は言及する。 「被害者からの話を聞く限り、女性起業家へのセクハラはベンチャーキャピタル業界内では前から言われていたことのようです。 ベンチャーキャピタルの社員で、普段からセクハラ行為に及んでいる人が自社内の女性社員に対しては、尊重して丁寧に対応するかというと、そうではないのだろうと推測されます。 時代錯誤ですが、やはり普通の会社員とは違い、何億ものお金を投資する担当者ですから、『自分にはこんなに力があるから少しぐらい…』というような感覚を持ってしまっているのでしょう」
「背景に業界全体の問題があると確信」
指宿弁護士は今後のジャフコとの交渉について「われわれとしては交渉で会社と話し合いで解決するのがベストだと考えている」としつつ、次のように展望を語った。 「裁判になると時間もかかるし費用もかかります。なによりも被害者の心身的な負担が大きいです。 ですが、会社が全く対応しない場合は仕方がないので、提訴せざるを得ないと考えています。 また、われわれ弁護士としては、被害者の救済が第一ですので、そこに向けて交渉など進めていきたいと思いますが、本件の背景には業界全体の問題があると確信しています。 この事件を通して、被害者の回復だけでなく、会社・業界が変わるきっかけになればと思います。被害者もそれを望んでいます」 令和の時代でも問題となるセクハラ。特定の業界で根深く、より悪質なのだとすれば、早急な対策が強く求められる。
弁護士JP編集部