展示中止問題の後 「表現の不自由展」実行委が会見(全文2)報道の自由をも侵害
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で展示中止となった企画展「表現の不自由展・その後」の実行委員会は2日午後、日本外国特派員協会(東京・千代田区)で記者会見を行った。 【動画】展示中止問題のその後 「表現の不自由展」実行委員会が会見(2019年9月2日) ※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードは「展示中止問題のその後 「表現の不自由展」実行委員会が会見(2019年9月2日)」に対応しております。 ◇ ◇
『平和の少女像』に報道が集中している
アライ:ご紹介いただきましたアライ=ヒロユキと申します。美術評論家ですが、特に検閲の問題でも専門家でもありまして、こういう『検閲という空気』という本を以前に出版してます。では、これからちょっとお話をいたします。 「表現の不自由展・その後」には全16組の作家が出品しています。公共施設や公共空間で検閲された美術作品を集めた本展の出品構成は以下の枠でくくれます。こちらは作品の主題で分けた、だいたいの分類になります。 まず朝鮮の植民地支配の視点、次に天皇制、福島の放射性物質汚染、そのほかとなります。全体の構成は、日本の歴史や政治体制における負の問題を主題とした検閲作品が多くを占めます。日本社会での検閲は、ほとんどがこのモチーフの問題視から起きます。これは2014年以降増えてきましたが、最近はかなり悪質化しています。 本展の批判は、そうした社会状況を知らないためです。そうした実情へのしっかりとしたリサーチが展示の背景になっています。ただし、わいせつに関しては刑法に触れる恐れがあるため、津田芸術監督や美術館学芸員との相談の上、断念せざるを得ませんでした。特に強調したいのは、『平和の少女像』に特に日本のメディアの報道が集中していることです。いっぱい寄せられた電話の苦情なんですが、実際は5割が『平和の少女像』、4割が大浦信行の『遠近を抱えて』、残りが1割です。 報道されない理由は天皇タブーです。昭和天皇の写真を焼いたのが非難理由ですが、実際は天皇の写真をコラージュした彼の版画作品です。この点が誤解を受けていますが、この批判には社会心理的な背景もあります。日本では言挙げせずという言葉があります。日本の支配的価値観に逆らって言葉にすること、明らかすることは敬遠されがちです。天皇制に反対しようが支持しようが、天皇の写真をコラージュすることは不敬とされます。ここに論理性はありませんが、戦前に見られた不条理な傾向が近年は高まっています。この社会の不寛容さを白日にさらすことが本展の意図でもあります。不寛容でいえば、この横尾忠則さんの作品は、鉄道事故の被災者への配慮という理由でお蔵入りになったラッピング電車です。そしてこれは、こちらの右のほうですね。ターザンの叫ぶ姿が被災者の叫ぶ姿を連想させるとされたのです。