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「馬鹿ブス貧乏」本でショックを受けないための注意事項

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◆著者藤森かよこの生き様に何を学ぶか  ただし、この本はもう1つの読み方ができる。それは、藤森かよこさんという人の生き様を描いた「伝記」という読み方だ。各項目には藤森先生の体験や見てきた世界がエピソードとして挟み込まれ、この本自体に“人格”を付与している。  たとえば、「女性に対する性犯罪の野放し状態や、妊娠中絶の実態や公的支援の少なさを若い頃に知り、結婚後も妊娠することがなかった」話や、一人でも寂しくない人間でいる方法として「辺りを見渡し、自分の作ったものが何一つないことを確認して、自分がいかに他人の努力のうえで生活をさせてもらっているかを感じること」を紹介していること。「女の子は消費のために勉強をすべきであって、就職のことなど考えないように」と言った大学教授に対しては「失せろ、死ね、馬鹿」と本の中で吠えているし、エピソードの一つ一つに藤森先生のパーソナリティが宿っていると私は感じた。  こうした小さなエピソードが集積した本書は指南書の体裁をなしているが、藤森先生の人となりを表す伝記、ひいては彫刻のようなものと言ってもいいだろうと思う。現に、私は本書を読み、生きていくうえでの有益なヒントを拝受しながら、同時に藤森先生という人のファンになった。  この挑発的でストイックな本に全く頷けない人がいてもおかしくないとは思うし、本書が示すとおりに努力できない、あるいは努力したくない人がいても責められるべきでは全くない。悪いのは社会の側であって、理不尽を被っている人が努力して溝を埋めなければいけない所以はない。  そういう意味で、私は本書を手放しに推薦することはできない。ただし、社会の側が変わるまでには時間がかかり、今この瞬間にも油断をすれば理不尽を浴びせられるのが悲しいかな、実情だ。  もう一度言う。挑発と厳しい“現実”に耐えられないのならば、本書を手に取るのをやめたほうがいい。この本は、「馬鹿ブス貧乏と罵られ、あらゆるものに絶望し尽くした状態で、怒りを燃料にして生きたほうがやる気が出る」というごく限られた人間向きの指南書、あるいは厳しい女性差別がある時代に生まれ、半世紀以上もたくましく生きたカッコいい女性の生き様を体現した伝記である。

文:佐々木ののか

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