コーヒー好きなら知っておきたい8段階の「焙煎度」の違い
自分好みのコーヒー探しは焙煎度から
ある方から「ワインも少し勉強しておくといいよ。きっとコーヒーを理解する上で役に立つから」とアドバイスされたのをきっかけに、下戸の私もときどきワインを嗜むようになりました。 ワインの世界に初めて足を踏み入れる初心者の立場になって、改めて気付いたことがいくつかあります。生産国に地域、農園、品種、製法、製造年……いろいろ種類がありすぎて何から飲み始めたらいいか、わからないのです。 そこでワインの教科書を何冊か読み漁ってみると、その多くに「いくつかの品種を飲み比べて、自分好みの品種を見つけるところから始めよう」と書かれていました。ワインの香味は農園や製造年などより品種による違いがいちばんはっきりしているため、そこから入門するのが早道で、まずは自分の好みの品種を見つけておいしく楽しみ、それに飽き足らなくなってきたら別の品種を試すのが、初心者にオススメなのだそうです。 なるほど、と納得しながらここでふと、一つの疑問が生まれました。これがコーヒーだったら、初心者にどうアドバイスすればいいのでしょうか? あれこれ考えてみましたが、私ならばこう答えます。 「焙煎度の違うものを飲み比べて、まずは自分好みの焙度を見つけるところから始めてみましょう」と。 大半のコーヒー店では、いろいろな産地の豆を配合したブレンドの他、単一の産地の豆だけを使ったもの(ストレート)が「ブラジル」「コロンビア」などの生産国名や「モカ」「マンデリン」などの銘柄名で売られています。しかし生産国と焙煎度による違いで比較した場合、より香味の違いがはっきりと現れるのは焙煎度です。 カンザス州立大のグループが主成分分析という統計的手法で香味の違いをマッピングした結果、エチオピア、エルサルバドル、ハワイの3ヵ国の豆を同じ焙煎度にしたものと、どれか一つの国の豆を異なる焙煎度に煎りわけたものでは、前者がより狭く、後者がより広い範囲に分布する傾向が認められました。他のグループからも同様の結果が出ています。 いろいろな生産地の豆を同じような焙煎度にするよりも、一つの生産地の豆を浅煎りから深煎りに煎りわける方が、香味は多様に広がるのです。 あくまで初心者向けの提案ですが、最初は定評のあるコーヒー店で浅煎り、中煎り、中深煎り、深煎り……と飲み比べ、自分好みの焙煎度を見つけ、そこを中心に飲み比べてみてはどうでしょうか。 店や豆の種類によって多少のずれがあることも念頭におきながら香味の違いを意識するようにすれば、特徴がみやすいと思います。また店の人にオススメを尋ねたときも「苦味とコク」の深煎りと「酸味と香り」の浅煎りのどちらが好きかを訊かれることは多いので、そのどちらが好きかを把握しておくだけで、自分好みのコーヒーに出会える機会がぐっと増えるでしょう。