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選挙買収 候補者陣営から無理やり金品を渡された人も、法的責任を問われる?

配信

オトナンサー

 2019年7月の参院選を巡る公職選挙法違反(買収)容疑で、衆院議員(前法相)の河井克行容疑者、妻で参院議員の案里容疑者が6月18日に逮捕されました。2人はこれまでに、案里容疑者の初当選を目的として、地元議員や後援会関係者ら94人に約2570万円を渡したとされています。中には、トイレで克行容疑者から現金入りの封筒を一方的に渡された人もいたようです。  そもそも、相手から無理やり金銭を渡され、やむを得ず受け取った場合も、法的責任を問われるのでしょうか。グラディアトル法律事務所の磯田直也弁護士に聞きました。

缶ジュース1本でも「買収」に

Q.そもそも、選挙の際に相手を買収した場合、どのような刑罰が科されるのでしょうか。 磯田さん「公職選挙法221条で、『買収および利害誘導罪』というものが規定されています。 同条1項1号では、『当選を得もしくは得しめまたは得しめない目的をもって選挙人または選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益もしくは公私の職務の供与、その供与の申し込みもしくは約束をしまたは供応接待、その申し込みもしくは約束をしたとき』は、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処すると規定されています。 さらに、同条3項では、これらの行為を『公職の候補者』や『選挙運動を総括主宰した者』などが行った場合は、4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処すると規定されており、罰則が重くなります」 Q.どのような行為が買収に当たるのでしょうか。 磯田さん「金銭を渡すことが買収に当たることは明白だと思いますが、前述の条文をよく見ると、『金銭、物品その他の財産上の利益もしくは公私の職務の供与、その供与の申し込みもしくは約束をし』とあります。つまり、実際にはまだ渡していなくても、『渡してよいですか?(供与の申し込み)』あるいは『何日までに渡します(約束)』というのも、買収に当たることになります。 『物品』については条文上、その内容が制限されていませんので、極端な例としては、缶ジュース1本でも買収が成立します。旅行や観劇への招待も『財産上の利益』に当たると考えられます。その他、『公私の職務の供与、その供与の申し込みもしくは約束』の例として分かりやすいのは『私が当選した暁には、君を副市長や取締役にしてやろう』というようなものです」 Q.相手から金銭を受け取った側も、法的責任を問われるのでしょうか。また、もらった金銭を使った場合と使わなかった場合とで、罪の重さに違いがあるのでしょうか。 磯田さん「公職選挙法221条1項4号で、『第1号もしくは前号の供与、供応接待を受けもしくは要求し、第1号もしくは前号の申し込みを承諾しまたは第2号の誘導に応じもしくはこれを促したとき』にも、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処すると規定されています。つまり、金銭を受け取った側にも、刑事処罰が予定されていることになります。 このとき、受け取った金銭を使っているか、使っていないかによって法定刑に違いはありません。ただし、一般論としては、受け取った金銭を使っていた場合、情状面で不利に扱われる可能性はあります」 Q.では、金銭を相手から押し付けられてやむを得ず受け取ったとしても、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。 磯田さん「たとえ押し付けられた金銭であっても、金銭の供与を受けたことには変わりないため、その他の要件が満たされるのであれば、刑事処罰を受ける可能性があります。『押し付けられたんだ!』という苦しい言い訳が通るのであれば、受け取った側にも刑事責任が法定されている公職選挙法が、絵に描いた餅でしかないことになります」 Q.金銭を受け取っていながら、その事実を隠していた場合、法的責任を問われるのでしょうか。 磯田さん「前述のように、金銭を受け取った側にも刑事責任があります。そのため、金銭を受け取った事実の有無は、自己の刑事責任追及に関わる可能性のあるものです。 この点、憲法38条1項では『何人も、自己に不利益な供述を強要されない』、刑事訴訟法198条2項では『自己の意思に反して供述をする必要がない』と規定されており、これらは自己負罪拒否特権(自分にとって不利益な供述を強要されない権利)や黙秘権として理解されます。これらの規定により、金銭を受け取っていた事実を隠していたとしても、直ちに何らかの法的責任にはつながらないと解釈できそうです。 もっとも、受け取った側が市長や議員など政治家の場合は、いわゆる『政治責任』については別途考える必要があると思われます。『金銭を受け取っていたのではないか』という指摘がされたとき、疑われた人物がどのような対応をしたかという点は注視しておく必要があるでしょう」 Q.選挙の候補者やその関係者から、「今度の選挙、よろしくお願いします」「選挙で応援してください」などと金銭や物品を渡されそうになった場合、どのように対処すればいいのでしょうか。相手が自分より立場が上だった場合、断りにくいこともあるかと思います。 磯田さん「何度も申し上げますが、金銭などを受け取った側にも刑事罰が予定されていて、その罪は決して軽いものではありません。金銭や物品を渡されそうになった場合は、毅然(きぜん)とした態度でこれを拒否し、受け取る約束などもしてはいけません。 勝手に送りつけられてきた場合や、どうしても断れずに受け取ってしまった場合は、速やかに郵送などで相手に返却するとともに、警察や選挙管理委員会に報告することがあなたの身を守ることにつながります。民主主義における選挙の公正さは、国民一人一人の意識によって支えられています。万が一、買収されそうになったときは、きっぱりと断る勇気を持つことが必要です」

オトナンサー編集部

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